涙の主と嘘つきな従者
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デン片手に駆け出した。
「たあっ!」
声と共に、フィレーシアンを振るう。
それだけで縄は簡単に斬れるし、得意の突きを繰り出せば鎖だって破壊出来る。
―――――が、それではヒジリを倒せない。
「死ねァ!地獄の猟犬は大人しく地獄に逝けっ!」
「断る!」
ヒジリの叫びに律儀に返しながら、ライアーは生きているように動く縄をぶった斬った。
続けて地を蹴り、突撃しながら突きを三連続。そこから壁へと近づき、壁を床にして駆け、ズバババババッ!と、走り抜けると同時に横薙ぎに鎖や縄を斬り刻む。
タン、と壁から足を放して着地し、それを狙ったヒジリの攻撃を飛んで避け、一発も外さず突きを放つ。ジャラジャラと音を立てて鎖だったモノが落ち、邪魔なそれを蹴飛ばしてライアーは最初の構えへと戻った。
「やっぱ強ぇな、さすがは“オントス・オン”の1人って事か」
「知っているのか」
「ま、有名っちゃ有名だからな。究極のお姉ちゃんっ子が率いるチームだって」
「・・・」
思わず遠い目。
言うまでもないが、『究極のお姉ちゃんっ子』はクロスである。
「他にもあるぜ。満面の笑みで飛竜を操る少女だろ、とりあえず一発ぶっ放してから作戦を考える妖精戦闘狂だろ、怒り狂って後先考えず砲撃ぶっ放す魔王だろ・・・」
それからそれから・・・と指を折りながら楽しそうに語るヒジリ。
一方、それを聞いているライアーは頭を抱える。
自分のチームメイトながら、思わず呆れてしまった。
「あ、でもお前の事はあんまり聞いた事ねぇな」
「そ、そうか・・・」
良い評判がないのは悲しいが、悪い評判がない事が救いだ、とライアーはホッとしたように息を吐く。
が、ヒジリはライアーの安堵を一瞬で砕いた。
「苦労人、万年片想い、陰で努力するけど報われない、とかなら聞いた事あるけど」
「最悪だなそれ!ていうか万年片想いってどういう事だっ!」
「そのまんまの意味だろ。聞いた話じゃお前、7年前からずーっとティア嬢に惚れてるらしいじゃねーか」
「なっ・・・何故お前がそれを!」
「安心しろって。そんなの災厄の道化じゃ調査済みだから全員知ってるし」
「安心出来るかーっ!」
くわぁっ!と、今にも噛み付きそうな勢いでライアーが叫ぶ。
先ほどまでの冷静な雰囲気はどこへやら、頬を赤く染めて照れやら怒りやらを動力にツッコみまくるライアーの動きに合わせて黒髪が揺れる。
「まー落ち着けって」
「くっ・・・何故敵に落ち着かせてもらわねばならないんだ・・・」
ケラケラと笑いながら手を振るヒジリを睨みつけながら、ライアーはフィレーシアンを強く握りしめた。
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