例えばこんな願いを抱くのはおかしいかな
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が無かったのだ。
そんな折に、束は私に出会った。
不思議と互いを受け入れた私達の距離は縮まり、人生で初めて友と呼べる関係になった。
未だに束には何故私が気に入ったのか理解できていないが、2人で過ごす時間が楽しかった。だからこそ、束は余計に自分の心が歪んでいることを思い知らされた。
私は周囲とも、少し距離はあれど付き合えていた。でも、束にそれさえ出来なかった。束の心が、他者と同じ次元とレベルに合わせてコミュニケーションを取ることを拒絶した。
束は人知れず苦しんだ。
他人と同じことを出来ない、異常な自分の心を、他の人間と同じにしたかった。
知らなくていい、考えなくていい理屈や理論が目の前の全てを否定していくさまが辛かった。
明晰であると自負する頭脳の代償が、とても大きく致命的なものだと思えていた。
これでは沢山の友達も作れない。
他人と笑いあうことも出来ない。
両親を愛しているとも思えない。
遊戯を楽しもうと考えられない。
真面に恋をすることも出来ない。
当たり前に考えられる筈のことが、考えられない。
それならば、こんな心はいらない。欲しくない。
誰でもいいから、この心を交換して欲しい。
束は、私や妹のような―――まともな人間の女の子になりたかったのだ。
そうすれば、こんな苦しみなど味わわずに、何も考えないで笑っていられるのに。
でもそれは叶わないから―――だから、「心」を作ることにした。
= =
「フラグメントマップは空っぽの脳髄。人間の脳波や神経の動きや状況による血管の収縮やら脳内麻薬の散布、果ては操縦者の会話や独り言とそのシチュエーションから導き出される感情や発想の道筋。多くの経験があればあるほどにそれは細かく、多く枝分かれし、あらゆるパーソナルデータを収拾し尽くす。つまりそれがフラグメントマップであり、その操縦者の分身か、もしくは娘なの」
「ならば、何故多くのISコアを作った?白騎士のコア・・・ヴァイスだけではいけなかったのか?」
「一つじゃ駄目だよ。例えばヴァイスちゃんだけだと、それはあくまでちーちゃんの客観的に観測できる傾向とロジックを組み合わせただけの存在。コピーではないけれど、それは普通とは程遠い。だから出来るだけ優秀で、尚且つまともな倫理観を持った、私と同じ女の子をもっと沢山・・・それで、ネットワークで潜在的に重ねあわせ、より多く重なる部分がマップとして残ってゆく」
「そうして数を増やしていけば、淘汰された感情はマイノリティとして自然に削ぎ落とされていく。それがゴエモンの言っていた”ひな形”という訳か。さしずめ”普通の人間”になるためのOSと言った所か?」
「良い例えだね。そう、まさに心のオペレーションシステムだよ。だからISの操縦者を募ろうと思って情
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