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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十六話 調印式
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の一角、調印式の場からは少し離れた所に彼らの居場所が有りました。但し要塞内の取材、撮影は大広間と臨時にあつらえたプレスルームを除けば厳禁です。

これを犯した場合はスパイ容疑で逮捕される事になります。この事は事前にマスコミには通知されていて同盟政府はこの件に関して一切マスコミに便宜を図らない、帝国政府に抗議するような事はしないと警告しています。つまり余計な事はするな、揉め事を起こすな、そういう事です。

ブラウンシュバイク公が“トリューニヒト議長、こちらへ”と言って議長を大広間の中央へ誘いました。中央には調印式で使用するテーブルと椅子が用意されています。その近くに正装した女性が居ました。銀河帝国皇帝アマーリエ陛下です。ブラウンシュバイク公と議長はそちらに歩いていきます。残りは私も含めて大広間の端の方に移動しました。

妙な配置です、女帝陛下を中心に正三角形を作るような形で同盟の随行員、帝国の随行員、マスコミが居ました。それぞれ一緒になると揉め事が起きかねないという事で分けたようです。もっともマスコミは同盟、帝国、フェザーン、皆一緒です。

ブラウンシュバイク公とトリューニヒト議長がアマーリエ陛下に近付きました。ブラウンシュバイク公が横にズレ道を譲るとトリューニヒト議長が前に進み女帝陛下の前で跪きました。“おお”という声とフラッシュが凄いです。跪くのは帝国風の最敬礼です。帝国では誰もが女帝陛下の前で跪きますが同盟ではそのような礼は有りません。トリューニヒト議長が帝国風の礼を取った事で同盟が帝国の権威を認めた、女帝陛下の権威を認めたという事になります。

女帝陛下がトリューニヒト議長に近付き議長の身体に手をかけ立たせました。またフラッシュが焚かれました。女帝陛下がトリューニヒト議長を自ら立たせたという事は議長は臣下ではない、そのような礼をする必要は無いという事の表明です。つまり今度は帝国が同盟の権威を認めた、最高評議会議長の権威を認めた事になるのです。

多寡が儀礼上の挨拶ですが一つ一つの行為に重い意味が有ります。そして今回の事例が前例となってこれ以降の帝国と同盟の儀礼になるのです、このあたりの手順はヴァレンシュタイン委員長とレムシャイド伯が事前に調整し両国の了解を取ったそうです。それを聞いた時にはあまりの面倒臭さに溜息が出ました。ヴァレンシュタイン委員長は苦笑していましたけど。

アマーリエ女帝陛下がトリューニヒト議長を調印式のテーブルに笑顔で誘います。議長も笑顔でそれに応えました。二人が並んで椅子に座ります。またフラッシュが焚かれました。銀河帝国皇帝と最高評議会議長が並んで座る、ここでも両者が対等の存在である事を表明しています。

テーブルの上には捕虜交換の帝国用、同盟用協定文書が置かれていました。それぞれ文書に署名すると二人
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