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翅の無い羽虫
第二章 私たちの国
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と比べ異常に多い。世界で格別にその値は抜いており、世界最多数の記録を築いた。
 その上、食料総生産も世界一であり、ある研究によって実現した新エネルギーの物質の大量開発に成功している。
 化石資源0のこの世界にとってこれほどまでに理想的な国は無いだろう。何より量が多い。資源も、食糧も、人材も。
 人体提供は支配国である大国の検査員によって選抜される。より貧困で、しかし質のいい人体を選び抜く。だが、質が悪くてもロクな人生を送ってない飢餓人は強制的に(原則選抜されれば強制的だが)大国へと捕縛、搬送される。貴族や軍人、政治経済そして食糧生産民といったこの国に貢献している人民は選抜されない。私もその一人なので人体提供される心配も恐怖もない。
 では選抜された人体は大国へ搬送された後どうなるか。予想はできると思うが、労働力として絞るだけ絞り取り、使えなくなったら肉として、食料として美味しくいただかれる。食えない部分は装飾品などの素材として無駄なく使われる。腐食部分や排泄物、とても食えたものでない端材は家畜の餌やや植物の肥料、またはバイオマス等の燃料となる。
 人体はこの時代において必要不可欠な「人財」なのである。
 協定の条約はこれだけでない。自国で生産した食物の40%を輸出しなければならないことだ。これが原因で飢餓人が増えるのである。そしてダメになった人材を連れて行く。質の悪いシステムだ。
 また、食料だけでなく新エネルギー物質の提供も含まれる。強欲にする程育てた樹は早く枯れるというのに、実に愚かだ。大国はこの国より賢くはないのだろう。
 だが、愚かでも武力と権力、そして金があればどんな国でも従えられる。私らの国は以上の大量寄付と引き換えに世界流行病のワクチンを優先提供、他国防衛と軍事力提供、輸入品を贔屓(ひいき)的にこの国だけ関税を安くしてくれる条件を与えてきた。
 おいしい話だが、そんな簡単な餌に引っ掛かる程この国は馬鹿ではない。ではなぜそうしたのか。
 これもまた酷い理由だ。増えすぎた人間を減らしたかったからだ。だが、倫理的に人間を減らしていくのは問題ではあった。さぁどうするか。
 別の国に殺してもらうことだった。そうすれば自国の責任にはならないという理由で。
 この国は他国よりは賢いが、やはりどこか残忍さがある。私にすれば狂っているとも言ってもいい。
 なんにしろ、私の視点として結論付ければ、
 ――豊かすぎる国は他の飢えた国に貪り食われてしまうのだ。

『……まぁ正解、うん』
「で、本当の用件は? 緊急警報のことだけで連絡はしないだろ」
 アマノはしばらく黙りこむ。画面越しの表情を見ると、少し俯いている様にも見える。
「……どうした、もしかして言いづらいことなのか?」
『いや………思い出してるとこ』「普通に忘れたんかい
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