トワノクウ
第零夜 遙けき蒼/晴けき青
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
ー分かったって」
「じゃあカウント取るよ。ちゃんと三歩進んでふり返れよ。――いーち」
一歩。
分かってしまった。これが彼なりの最後の気遣いなのだ。ふり返ったその先にきっと彼はいない。だからせめて、それが痛みを刻む記憶にならないようにと、持ち前のにぎやかしを発揮したのだ。
「にー」
二歩。
だったら応えなければいけない。何もないという顔であと一歩を耐え抜かなければならない。
「さんっ」
最後まで聞こえる前に勢いよくふり返る。
――案の定、そこには彼はいなかった。
虚脱してその場で膝をつく。喪失感より後悔より悲痛より、何より大きいのは無力感だ。
このあとに待ち受ける結果はとうに知っている。それは最悪の結末ではないだろう。それでも唯一彼にとってのみ失うものが大きすぎる。それを未然に防げなかった自分の無力を責めずにはおれなかった。
「……と、き」
慟哭は上げない。涙は流さない。
それらはすべて約束≠果たすための糧に変えて。
網のない青空の下で、決意を灯した。
Now Loading…
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ