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トワノクウ
トワノクウ
第零夜 遙けき蒼/晴けき青
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ー分かったって」
「じゃあカウント取るよ。ちゃんと三歩進んでふり返れよ。――いーち」


 一歩。

 分かってしまった。これが彼なりの最後の気遣いなのだ。ふり返ったその先にきっと彼はいない。だからせめて、それが痛みを刻む記憶にならないようにと、持ち前のにぎやかしを発揮したのだ。


「にー」


 二歩。

 だったら応えなければいけない。何もないという顔であと一歩を耐え抜かなければならない。


「さんっ」


 最後まで聞こえる前に勢いよくふり返る。

 ――案の定、そこには彼はいなかった。


 虚脱してその場で膝をつく。喪失感より後悔より悲痛より、何より大きいのは無力感だ。

 このあとに待ち受ける結果はとうに知っている。それは最悪の結末ではないだろう。それでも唯一彼にとってのみ失うものが大きすぎる。それを未然に防げなかった自分の無力を責めずにはおれなかった。


「……と、き」


 慟哭は上げない。涙は流さない。
 それらはすべて約束≠果たすための糧に変えて。
 網のない青空の下で、決意を灯した。



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