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戦国異伝
第百六十五話 両雄の会同その四

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「だからこそじゃ」
「それでか」
「そうじゃ、うんとよい香りにしてくれるそうじゃ」
「それは何よりじゃな」
「青揃えでいこうぞ」
 織田家の青、その服でだというのだ。
「よいな、それで」
「うむ、身体を清めたうえでな」
 織田家の面々は今は温泉に入りながら笑顔で話した。風呂で身体を清め疲れを癒しそのうえでだった。
 本願寺の面々も都に近付く、その中で。
 顕如は馬上から民達を観てだ、こう言うのだった。
「よい暮らしをしておるな」
「はい、実に」
「どの者も」
「泰平を楽しんでおる」
 それがよくわかるというのだ。
「そして暮らしぶりも楽になってきておる」
「家も大きく立派ですな」
「喰ろうているものも」
「米まで食っておる」
 それまでもだというのだ。
「民百姓までがな」
「ですな、田畑も荒れておらず」
「堤も橋もあります」
「村も町もよいものです」
「一変しております」
「政がよいせいじゃな」
 何故そうなったのか、顕如にはすぐにわかった。それで馬の上から確かな顔でこう言い切ったのだった。
「織田家の」
「織田信長の政がですか」
「よいせいですか」
「道もよい」
 彼等が進んでいる道もだ、広く手入れが行き届いている。都より彼が思ったよりも速く進めている程である。
「実にな」
「民の為の政をしている」
「そう思っていいですか」
「間違いなくな」
 信長はだ、そうしているというのだ。
「民に聞いてみてもよい」
「織田信長がどういった政をしているか」
「そのことを」
「民達自身にですか」
「そうしてもいいですか」
「聞くまでもないがな」
 既にだ、彼等の顔に出ていることだというのだ。
「民を常に念頭に置いた政をしておるわ」
「しかし織田信長は」
 下間の者の一人が言って来た。
「仏敵ですが」
「御仏が守られる民のじゃな」
「はい、その筈ですが」
「そうじゃな、しかしじゃ」
「天下を見るとですな」
「泰平でしかも豊かじゃ」
 その二つが兼ね備わっているというのだ。
「よい国になろうとしておる」
「戦国の世が終わろうとしていると」
「少なくとも織田家の領内ではな。賊もおらぬ」
 賊は片っ端から信長に成敗されている、どの様な山賊や海賊も信長は許さず容赦なく兵を出して倒し尽くしているのだ。
 それが為にだ、顕如の道中もだ。
「追い剥ぎを見たどころかな」
「噂も聞きませぬな」
「そうした者達のことは」
「戦国の世とは思えぬ」
 そこまで泰平だというのだ。
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