トワノクウ
第六夜 ふしぎの国の彼女(二)
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てえに人にとばっちりが行くっての、忘れてたわけじゃないでしょうね?」
「――。すいません」
布のせいでくぐもった声は不満げだが、それよりくうには、再び耳に入れた彼女の声がどうしても聞き覚えがあるものに思えてしかたない。
小学の頃は親の仕事で外国とび回ったからね。ナンバーが自然と洋楽ばっかりんなっちゃって
でも英語とか発音よくて声もよく伸びてるし、素敵だよ。くうの声なんて無駄に高いだけだもん
やだよ。女なのにこんな低い声
確かめたい。
くうは少女が声を上げるのを待ったが、少女は再び気炎を上げたカマイタチとの戦いに集中してしまった。
そしてさらに、黒鳶もくうたちの前に降りてきた。
このイタチにまで何かされたらどうしよう、と怯えが臨界点に達した瞬間を見計らったように、朽葉がくうのそばまで来てくれた。入れ替わりに巨大ネズミは黒鳶の後ろに下がった。
「お前が来ると知っていれば来なかったものを」
「こいつぁ手厳しい。私は大歓迎ですよ。帰ったら萱さんの悔しがる顔を拝めやすからね」
人相が知れない相手には忌避が湧く。どの時代でも危険人物は顔を隠すと相場が決まっているのだ。この男も友好的とは限らない。
「藤さん」
黒鳶は朗らかに少女に呼びかける。
「もういいですよ。さっさとやっちまいな」
「はい」
たった二音がやはり知ったものに聞こえる。けれどもそれを気にするわけにはいかない。その音を発した少女がまさにカマイタチに刑を執行しようとしている。
「やめてください! カマイタチは三匹揃えば安全なんでしょう!? この子返しますから、だからその子達も……!」
「安全になろうがそいつがはぐれたら元通りでしょ。いいから黙って見てな。――命令は、とっくに下されてんのよ」
「やめ……っ」
前に踏み出しかけたくうは、朽葉に掴まれて止められた。朽葉がくうを両腕に閉じ込められて守るようにしたのは、少女からか、これから起きる光景からか。
『タ、助ケ、テ』
カマイタチの片割れが喘ぎ喘ぎに訴える。獣型の妖がしゃべる、それだけの事象が生々しく耳を掻き回す。
今までのアドベンチャーで敵キャラクターに容赦したことはくうにもない。だが、今回のこれは現実だ。
『死ニタク……ナ、……』
「うるさい」
少女は再び音叉を鳴らし、太さが一センチもない長々としたトカゲを出した。トカゲは細剣と化す。
少女は手を、上げる。
「知らない、そんなの」
――無情に過ぎる答えに、くうははじめて、目の前の少女に恐れを抱いた。
そして、その身を針のように鋭くしたトカゲを武器に、少女はカマイタチ二匹の胸に風穴を開けた。カマイタチたちは地面に転がりしば
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