第十一話 ハーレーの女その五
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「もう帰ろうね」
「ええ、そうするのが一番ね」
「何ならテニスする?」
菊は笑って冗談も言った。
「それする?」
「テニス?」
「そう、今テニスコートにいるし」
戦場になった場所からの冗談だった。
「そうする?」
「悪くはないわね、けれど」
菖蒲は今も表情を変えない、無表情なままだ。だが言葉に微笑みを含ませてそのうえで菊に対して答えた。
「今の私達は」
「ええ、テニスをするにもね」
「ラケットもなければ」
「ボールもないわね」
「それではね」
テニスコートにいてもだというのだ。
「何も出来ないわ」
「そうね、服もね」
「今の私達は制服よ」
このことも重要だった、テニスをするにおいては。
「若しこの服でテニスをしたら」
「見えるわね」
菊は自分の制服のスカートだけでなく菖蒲のそれも見た、色こそ違うが二人共その丈はかなり短いものである。
このスカートでテニスをすればどうなるか、言うまでもなかった。
「これだと」
「見せたいかしら」
「まさか、私今下にスパッツも半ズボンもはいていないわよ」
「私もよ」
ブルマではない、最早八条学園ではとうの昔に絶滅している。
「だからね」
「サービスするつもりもないしね」
「だから今はね」
「そうね、テニスはね」
「出来ないわ」
「そういうことね、じゃあね」
「帰りましょう」
菖蒲の返答は実にあっさりとしたものだった。
「これからね」
「そうね、それじゃあね」
こうしたことを話してだ、そのうえでだった。
二人はテニスコートから去った、そうして日常生活に戻った。だがこのことは薊達と集まった時に話した。そこには智和もいた。
智和はその話を聞いてだ、こう言ったのだった。
「君達もだね」
「はい、そうです」
「私達にも符号が出ました」
力を使って怪人を倒した時にというのだ。
「北斗七星の」
「それぞれのやつが」
「そうなんだね、これでね」
智和は二人の話を聞いてからだった、薊と桜を見て言った。
「君達は四人共だね」
「だよな、北斗七星のな」
「符号が出ましたね」
「それぞれの色のね」
こう言うのだった、薊と桜の言葉を聞きながら。
「赤、青、黄色、桃の」
「何かな、生まれた時からな」
ここで薊は智和に応えてこう言った。
「赤が好きなんだよ、あたし」
「私は青です」
「私は黄色でね」
「私は桃色です」
三人もだ、子供の頃から好きだったというのだ。
「物心ついた時からです」
「その色が好きでして」
「服も身の回りのものもその色で統一しています」
「無意識からくるものかな」
智和は四人の話を聴き終えて言った。
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