トワノクウ
第六夜 ふしぎの国の彼女(一)
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制において中務省に属し、占いや天文、時や暦を専門にしていた機関だ。平安ジャンルにひんぱんに登場する陰陽師・安倍清明も、史実ではこの組織の天文博士である。
「ちょー……っと待ってください? 佐々木さんが、その陰陽寮、の一番偉い人ですか?」
「ああ。そもそも佐々木殿が作られた組織だからな。性別性格、果ては前科も問わず異能者を集めて妖と戦う戦闘集団だ」
歴史と違う。
一世代前のメディアや今普及しているソフトのおかげで有名だが、陰陽寮はれっきとした学者や学士の集まりで、陰陽師に妖怪退治ができるというのはファンタジーの中のことだ。さらには、陰陽寮は今年、つまり明治3年までは存続しており、安倍清栄の代で廃止になることになっている。
(つまり、そういうこと)
ここは厳密には日本ではないことが確定。
(陰陽寮は学問集団じゃない。妖と戦う専門機関)
くうはこの世界での新出項目を頭にインプットした。
「妖と戦うというのはそれだけで相当高い腕が求められるし、死人も出る。最近は人手が足りないと佐々木殿も言っていなかったか? ここのとこ妖が活発になって、奴らも神経質になっているんだ。仲間を奪ったのは妖だ、一刻も早い駆除を、と望む輩も多い」
「朽葉さんはその意見、賛成なんですか?」
このイタチを兄許に帰してやろうとするほどの女性なのだ、それはないと信じたい。
「妖の全てが悪と決まったでもなし。どんな事件にせよ、真実が分かるまではどちらの肩も持つつもりはない」
やはり朽葉は「見極め」を怠らない。仕事人として尊敬すべき姿勢だ。くうの世界にいたなら、朽葉は名裁判官として名を馳せたに違いない。
「お前はどう思うんだ?」
「ふえ?」
「妖の活性化だ。やはり単純に人間を追い出したいから暴れているのだと思うか?」
「そ、そんな。まだ分かりません。くう、まだここに来たばっかで、分かんないことだらけですしっ」
「直感でいい。意見を聴かせてくれ」
「……単純じゃないような気がします。勘ですけど」
「根拠はないんだな?」
「強いて言うなら、彼岸だとそれがセオリー……定石だからってことですかね。こういう時は陰謀を持った第三者がやってるってのがお約束です」
どの3Dアドベンチャーでも双方が互いを犯人と決めつけ諍いを起こせば、最終的に第三者の黒幕が争いを誘発していたと判明し、その黒幕と戦うために和平するのが鉄板だ。白ける構造なのに、ラスボス戦で対立する二つの組織や種族が手を取り合って戦うシーンではいつもぐっと胸が詰まった。
「そうか……そうだな、うん」
朽葉は文字どおりその豊かな胸を撫で下ろした。妖が全面的に悪玉では不都合があるらしい。
(シナリオゲーだと向こうに知り合いがいて種族で板挟み
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