SAO編
第二章 曇天の霹靂
4.鏡裏の黒幕
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き起こる言いようもない衝動。
私は……いつのまにか《化け物》に成っていたのだ。
今思い返せば、赤黒い水溜まりの中で夢中にそれを啜っていた光景は、夢ではなく現実だったに違いない。
意識は残れど、体は人を襲うことを止めはしない。
私は屋敷中の人を襲い、殺した。
そして物言わぬ骸となった彼らを、《奴》が失われたはずの《力》を用いて生ける屍へと変えた。
我が屋敷は、不死者の跋扈する館となってしまった。
そのうえ、事態はもはやそれだけに収まらなかった。
異変は屋敷のみならず、我が領地全土に及んでいたのだ。
穏やかだった気候は目まぐるしく変動し、急激な天候の変化は作物に多大なる影響を及ぼした。
それらが領民たちに与えた被害は想像の通りだ。
我が領地は、素性も知らぬ一人の旅人を無条件に信用して屋敷に泊めてしまった愚かな領主である私のせいで、ようやく訪れようとしていた平穏の日々に終わりを告げてしまった――』
後悔、自責、無念、悔恨の懺悔。
たった一つの行動が全てを壊してしまった領主の、慙愧の叫び。
その声音は、言葉は、表情は、作り物のプログラムと断じてしまうにはあまりにもリアルで、悲哀に満ちていて。
あの日記を直に読んだ私は、いつのまにか涙を流していました。
『――冒険者よ、ゆめゆめ忘れぬことだ――』
最後に、領主は言う。
『――そなたらが倒した《あれ》は……ただの《影》だ。
本物の《奴》は既に他の地へと移っている。
彼の者は恐らく更に上層でその魔手を張り巡らせていることだろう。
……私が言えた義理ではないが、恥と承知で頼む。
《奴》を、どうか滅ぼしてほしい。
我が領地のような被害をこれ以上増やさないように……いや、建前はこの際よそう。
このような姿となり、私は自分の無念さえ自分では果たせない。
私の無念を……どうか、どうか代わりに晴らしてくれ――』
領主の必死の懇願に。
それは誰が言ったのか。
「はい」と了解の言葉が私の耳に届いた。
『――ありが、とう――』
泣きそうな笑みを浮かべて、感謝の言葉と共に領主の亡霊は消え去る。
私のストレージに、《慙愧の結晶》というアイテムが増えていました。
◆
「……ほむほム。それは間違いなく《キャンペーン・クエスト》だろうナ」
「でしょうね……」
不死者の館からあたしたちが帰った翌日。
依頼されていたドロップアイテムを渡しに、アシュレイさんたちが使用している借し工房へ行くと、何故かアルゴさんが居ました。
話を聞くと、
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