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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
3.慙愧の領主
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すんだ。範囲はワイアプラーを中心に半径ニメートルってところかな。効果は解らないけど、きっと強力な状態異常を引き起こすのだろうと思う。

 遠距離攻撃に二連の投剣ソードスキル。近距離に黒い霧の範囲攻撃。
 あとどんな攻撃方法があるのかは解らないが、やるのなら一撃離脱(ヒットアンドアウェー)。相手の技後硬直に一撃当てて距離を取るオーソドックスな戦法が効果的だろうと思った。
 あっと、既にその戦法を取っているキリュウさんにヘイトが持っていかれてしまう。
 あたしはリ冷却(クーリング)タイムが終了した威嚇スキルを再度放った。



 そして数分後、カースド・ザ・ワイアプラーとの戦いはあたしたちの優勢で進んでいた。
 ボスの投剣ソードスキルにいくつかのバリエーションはあったものの、それはキリュウさんの洞察力を越えるものではなかった。
 一度見た相手の技の動きを忘れることは無いというキリュウさんにとって、プレモーションが必ず決まっているソードスキルは、見たことが無いモーションを相手が取れば即座に解る。
 何か来ると解っていれば対応には雲泥の差が出るのは当然だ。
 回避に専念しつつ、着実とワイアプラーのHPを削ってきたあたしたちは、とうとう最後のHPバーの三分の一にまで追い詰めた。

 ――あともうちょっと。あともうちょっとで勝てる!

 と逸る心を、

 ――落ち着いて〜、落ち着いて〜、びーくーる。

 とあたしは冷静に鎮めた。
 此処で慎重にならなければ、一度の失敗が取り返しのつかないこともある。
 だから、一度距離を取って――――

「……!? ――駄目だ、ルネリー! そのまま倒せ!!」
「え……?」

 長い戦いでは、HP回復のために何度か交代で戦線を下がる。
 今はキリュウさんが後方に下がってポーションを飲んでいた。
 その彼が、普段は落ち着いた声を響かせる彼が、何かに気付いたかのように焦る声音で叫んだ。

「――――」

 直後、キリュウさんがあたしを急かした理由が解った。

 対アンデット用バフの効果時間が、《最後の聖水》の効果が、今、切れた。

 キリュウさんも、あたしと同時に最後の聖水を使ったはず。

 つまり。



 ――アストラル系モンスターにダメージを与える手段を……あたしたちは失った。



 聖なる光は刃から消え、弾くは月の淡い光のみ。

 同じく月光を反射した大きな姿見がキラリと光った。
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