暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
3.慙愧の領主
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んのめりそうになりながら急停止してキリュウさんを見ると、彼はその鋭い蒼い瞳である場所を見据えていた。
 あたしは無言でキリュウさんの視線の先を見る。

「?」

 屋根裏部屋の最奥、明かりも薄く漆黒の帳が降りているようなその場所。
 主の居ない王座。――の後ろから。
 ぼんやりとした輪郭の《黒い手》が、見えていた。

「な、なに……?」

 王座の影裏からその背もたれを掴む黒い手は、握り砕きそうなほどにだんだんと力を籠めているのか、微細に痙攣している。

「ひっ、えぇ」

 ガシッ! ともう片方の黒い手が影より出でて、私の身長はあろうかという王座の背もたれの上部を掴んだ。

 ――何かが、出てくる……!

 そう直観した次の瞬間。
 ガバァッ!! と王座を乗り越えるように《それ》は現れた。
 ステンドグラスに描かれたような死神みたいな大きな暗黒色のローブ。
 すっぽりと頭を覆い隠しているフードの隙間から見えるのは深緑に光る瞳。
 全体が脈動しながら徐々にその姿を肥大さていき、天井に頭が着きそうなところで止まった。

 頭上に表示された名は《Cursed The Wirepuller》。

 あたしの《識別》スキルが相手の浮遊していて、若干透けているような見た目をしていることからアルトラル系モンスターだと推測。
 そして名前に定冠詞が付いているので、この洋館ダンジョンのボスであることが解る。
 取り巻きは居ないようだ。現れたのはボス一体だけ。

「――ルネリー……倒すぞ」

 残る聖水はあたしとキリュウさんであと一つずつ。
 最後の聖水を武器にかけてキリュウさんが槍を構えた。

 ――こいつで、きっと最後だ。

 ボスを倒せば、レイアやチマと会える。
 そう信じなければやっていられなかった。

「――はいっ!」

 力強く返事をして、あたしも自分の剣に聖水をかける。
 ぼんやりと発光する愛剣に頷いて、切っ先をボス――カースド・ザ・ワイアプラーに向けた。

 ――戦闘、開始だ。

『キィィィィィ――――ィィィイイ!!!』

 金属の摩擦音みたいな奇声を上げながらワイアプラーが動き出した。
 わたしとキリュウさんを中心に円を描くように素早く浮遊移動する。

 初手はあたしだ。

「《ハアアアアアア》!!」

 威嚇スキルの咆哮。ワイアプラーの攻撃意識をあたしへ向けるように仕向けた。
 漆黒のローブをはためかせながら移動するワイアプラーが両手を上に上げた。

 ――なに? 万歳?

 相手に武器は確認できなかった。それは先ほどまで戦ってきたレイスたちも同様だ。だけどどんな特殊攻撃を持っているのか解らない状況ならば、前に出るのは盾持ちのあたしの役
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