SAO編
第二章 曇天の霹靂
3.慙愧の領主
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帯が違うのだ。攻撃力の高い両手剣のクリティカルヒットなら、低階層の小ダンジョンボス程度このくらいのダメージは与えられる。
取り巻きが居ないのも助かった。
迷宮区ボス戦での取り巻きの厄介さは身に染みている。攻略人数が少ないこの状況で、倒すのがボスだけなのはかなり助かる。
わたしは安堵した。
――大丈夫、問題無く倒せる。
こいつを倒せばキリュウさんたちとも合流できるはず。四人で一緒に帰れる。
根拠はなかったが、わたしにはそのビジョンを見えた。
単純計算であと五回クリティカルを出せば倒せるのだ。
こちらのHPはまだ満タン。あちらはわたしたちの適正レベルよりも低い階層のボス。何発か攻撃を食らっても死ぬことはないだろう。
回避や弾きが得意のようだけど、レイアとの連携があれば怖くない。
吸血鬼というくらいだから、噛み付き攻撃とかもあるかもしれないのでそれには注意しよう。
――うん。大丈夫ッス。
油断はしてない。そして勝利への道筋は見えた。
わたしの口端に知らず知らずに笑みが浮かんだ。
「チマ、あれ!」
だけど、物事はそう上手くいかないように出来ているらしい。
「なっ……!?」
わたしの表情が笑みから一転して驚愕に変わった。
『ギ……グォォ、ォオォォ……ゲガッ』
先ほど減らしたノーブルヴァンパイアのHP、それがみるみるうちに回復していき、数秒後には完全状態に戻ってしまったのだ。
ついさっきまで見えていた、わたしの中のボスを倒した先のビジョンが崩れ去る。
「そん、な」
回復するような行動――薬を飲んだり、結晶を使ったりなど――は見受けられなかった。
ただ相手は吹き飛ばされて倒れた状態から立ち上がっただけ。それだけだ。
つまり、単純な《自然治癒》によっての回復。
倒すには、回復が完了する前に絶えずダメージを与え続けなければならない。
――回避や弾きが得意な相手に……?
一滴の汗が、心に流れた。
◆
ボッ、ボッ、と手前の燭台から次第に明かりが灯っていく。
「…………」
照らされたその場所はまるでお城の謁見の間のような場所だった。
天井のステンドグラスは死神のようなローブ姿の何かが描かれ、全体的に黒いイメージを出している。
左右の大きな窓からは月光が差しこんだ。
仕掛け階段の先に在った扉の正面最奥には古びた王座とその左右に巨大な姿見。
――あの姿見がもしかしたら《表の館》に繋がっているのかも!
あたしは思わず姿見に駆け寄ろうとして、
「……待て」
キリュウさんに止められる。
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