SAO編
第二章 曇天の霹靂
3.慙愧の領主
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可能性も無きにしも非ず。
罠解除スキルはチマが習得していた。俺たちでは罠があるかも解らない。
されど、今までに見付けられなかった《表の館》との明確な違いであることも事実だ。
「……ルネリー」
「はい」
「罠かもしれない。だが……」
「解ってます」
「……」
「解ってますから」
そう無垢な笑顔を向けてくる金髪の少女。
少しでもあの二人に会える可能性があるのなら、それに賭けるべきだと、言外に言っているように感じた。
俺は彼女に頷いてから柱に付いている大きなレバーを両手で握りしめ、力を込めて上から下へと動かした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
「……っ」
「あわっ、あわわわ!?」
直後、真上から響く轟音。
館全体が僅かに振動している。
ガコン、と振動音とは別に何かが外れるような大きな音がした。
それを合図として、ゆっくりと天井から《それ》は降りてきた。
――階段、なのか。
それは何本もの太い鎖て吊られた石造りの階段だった。
階段は三階よりも更に上、四階へと続いているようだ。
「……行くぞ」
「はい!」
もう確認はしなかった。ルネリーも即座に付いて来てくれる。
危険は百も承知だ。
だが、俺たちは決めていた。《諦めない》と。
レイアやチマを合流することを。無事に街へ帰ることを。――生きることを。
死中に活。それが今の俺たちの全て。
俺たちは階段を駆け上り、招き寄せるような錯覚を感じる漆黒の空間へと飛び込んだ。
◆
「ここは……」
「あれって、王座ッスか?」
わたしとレイアが階段を上った先は、教室の二倍の広さはある屋根裏部屋だった。
両脇の大きな窓からは先ほどの豪雨が嘘のように晴れた夜空が見え、天井には月と鳥と稲穂の描かれた色取り取りのステンドグラスが月明かりに照らされて優しく輝いていた。
部屋の端に一定の間隔で置かれた燭台の明かりに照らされるこの広い空間には、床に敷かれた金縁の赤カーペットとその先にある豪奢な王座、その王座を挟むように背後の壁に掛けられた巨大な二つの姿見が特に印象的だった。
「レイア」
「……うん」
わたしはちらりと後ろを見る。退路の確認だ。
先ほど通ってきた仕掛け階段へと通じる扉は開いたまま。閉じ込められたわけではなさそうだ。
腰のポーチから聖水を出して愛剣にかける。淡く発光して対アンデット用バフが付与された。
「……きたよ」
同様に聖水を使用し終わったレイアの言葉に、わたしは王座へと――王座に座るシルエットへと視線を向けた。
そのシルエットの肩がカクンと傾く。
直後、シルエットの人物
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