SAO編
第二章 曇天の霹靂
2.鏡の表裏
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目の前で金髪の少女――ルネリーが鏡の中へと吸い込まれていく。
「……!」
俺は咄嗟に消えゆく彼女の手を掴もうとするが、間に合わない。
ルネリーの体全てが鏡の中へと吸い込まれてしまった。
――まだだっ!
鏡の向こうにはルネリーの姿が確認出来た。まだ助けられる。
俺は鏡の中へと身を乗り出した。
ズズ……と俺の体が鏡をすり抜ける。違和感や抵抗感はない。
すとんと、ルネリーが倒れている場所へと何事もなく降り立った。
「……大丈夫かっ」
「えっ、あっ、はい!」
ルネリーは混乱しているようだ。床に座り込んだまま目を白黒させている。
しかしそれも仕方がない。俺とて事態を完全に把握出来てはいないのだ。
だが一応ルネリーの無事は確認出来た。次は――
「……? ……なっ!?」
俺は自分が今通り抜けてきたと思われる大きな姿見を見た。
しかし、元居た鏡の向こう側からは此方側が見えたのに、此方側からは向こう側は見えなかった。
鏡に映るのは俺と床に座るルネリーだけだ。
――此方側から向こう側へは行くことが出来ないということか?
鏡を触っても硬質な感触だけで吸い込まれることはなかった。
レイアとチマのの状況が解らない。ダンジョンは基本的にメッセージ機能が使用できないため、連絡を取ることも出来ない。
「……パーティーを、分断させられた……」
罠、という言葉が脳裏を過ぎる。
発動条件は鏡に触れること? いやしかし、通り抜けた姿見と同じ物を別の場所で初めて見た時にルネリーやチマが物珍しがって触れていたと記憶している。その時には何もおかしなことは起こらなかった。ならばこの鏡だけが特別なのか、それは現状解らない。
俺の呟きにハッとした様子のルネリーが立ちながら言ってくる。
「キリュウさん、早くレイアとチマと合流しないと!」
――確かに、ルネリーの言う通りだ。
原因を考えることは大切だが、今ははぐれた二人と合流することが先決だ。
この状況が何かしらの罠であったとしても、この世界が《ゲーム》で在る以上は打開する方法が必ず有るはずだ。
情報が足りないのなら、行動で集めるしかない。
「……そうだな」
頷きながら周囲を見渡すと、先ほどまで居た部屋によく似た部屋に俺たちは居るようだった。しかし、違和感がある。
《逆》なのだ。何もかも。
テーブルの配置、壁掛け絵画の位置、扉や窓、そしてこの大きな姿見に至るまで、部屋の内装が先ほどまでと線対象になっている。
――正に《鏡の世界》。それがこの洋館の隠しダンジョンというわけか。
「セオリー通りなら、どこかに元の場所に戻れる何かがあると思いますけど……今回なら
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