SAO編
第二章 曇天の霹靂
2.鏡の表裏
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この洋館は四階建てでした。
なのに探索可能だったのは三階までだけ。探索に夢中でそんなことにも気が付いてませんでした。
「……」
恐らく、四階に行けば《何か》が解るでしょう。
上手く行けばキリュウさんやルネリーとも合流することが出来るかもしれません。
――でも、それは楽観的希望。
仕掛け階段を使わなければ行けない四階、それは最悪の事態――《ダンジョンボスとの遭遇》を想起させるに十分でした。
戦闘の起点となる戦巧者のキリュウさん、敵の意識を引き受ける防御力の高いルネリー、この二人が抜けた状態でのボスとの戦闘は恐らく苛烈を極めるでしょう。
――行きたい。
四階へ駆け上り、ルネリーやキリュウさんに再会したい。
二人と離れてまだたったの二時間弱しか経っていないというのに、既に心細くなっている私が居ました。
双子の姉妹で、掛け替えのない親友のように育ったルネリーは元より、あのいつも無表情で冷静で、けれど時に見当違いなことを言う意外と抜けたところもある一つ年上の男性、キリュウさんも。
ルネリーの楽観的な言葉に突っ込みを入れたい。
キリュウさんの落ち着いた言葉を聞いて安心したい。
――けれど。
ルネリーと同じくらい大好きな親友であるチマ。
時におちゃらけて場を和ませ、時に鋭く指摘して道を示してくれる頼れる友人である彼女を、二人と会える確実な根拠があるわけでもない場所へ、危険であることは明確な場所へ、ただ行きたいという感情だけで連れて行ってもいいものか……。
「な〜に迷ってるッスか」
「え……?」
バンと、いきなり私の背をチマが叩きました。
次いで強く肩を組み、にぃっと笑みを向けてくる。
「《道》はもう見えてるッスよ。退路は、わたしたちにはないんスから――――行くしかないのに迷うのはナシッスよっ」
そう、でした。
退路? 洋館の出口? コードに護られた主街区?
キリュウさんやルネリーが居ない場所に逃げ帰って、どうしろというのでしょう。
帰るのなら、《全員一緒》。
私たちの《道》は、それしかないのですから。
――あーあ。また、佳奈美に支えられちゃったなぁ。
ルネリーにもキリュウさんにも支えられてばかりです。
嫌ですね、一方的なのは。どうせなら互いに支え合う関係に、私はなりたい。
「……行こう、チマ」
「そうこなくちゃッス!」
――待ってて下さい二人とも。必ず、助けに行きますから……!
私たちは一階エントランスのモンスターを倒しながら、現れた吊り階段を昇って四階を目指しました。
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