SAO編
第二章 曇天の霹靂
2.鏡の表裏
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ら今の状態までどうやって持っていくんだろう……」
「十中八九、この《旅人》が関係してることは明らかッスよね。実は事件の黒幕で、記憶喪失なんても領主を欺く嘘だったり……」
「とりあえず先を読もうよ。この日記には、きっとこの館の秘密が書かれているはず……」
九王暦591年 サクラの月 8日
あの《旅人》が来てからというもの、館の雰囲気は随分と明るくなった。
彼は実にユーモアのある性格をしていて、私や使用人たちも久しぶりに大きな声で笑ったものだ。
幼子のように純真な彼は何にでも興味を示した。
今日は領地の何処どこで何をしたなど、私との夕食時に話してくれるのが日課となっていた。
最近では、彼は我が館に関心を持っている。
どの程度広いのか、どんな部屋があるのか。
彼に訊かれて、私は少々戸惑った。
先々代の領主、つまり私の祖父が造らせたこの館。
幼少時に遊びに来てはいたので、その存在自体は知ってはいたが、基本的に一部しか使用しないために全容を把握していなかった。
そう彼に話すと、
『だったら、ボクが探検してもいいかい? 宝を見付けたら教えるよ』
と言ってきた。
子供の宝探しのような無邪気な発言に、私は笑顔で快諾した。
流石に宝などは残っていないだろうが、私にも知らない部屋が見つかるかもしれない。
――彼が見付けてくれるのなら、それは良いことだ。
「……」
「なんかこの領主さん、《旅人》に入れ込みまくりッスね」
「そう、だね。何処か、不自然なくらいに」
九王暦591年 ミカンの月 13日
あれからというもの、彼は館の中を探検しているようだ。
何やら熱中しすぎて食事の時間も忘れるくらいらしい。
探検は夜まで続くこともあって、彼の世話を任せている使用人の者を困らせているのを度々見かけている。
そういえば、今日給仕の者が不思議なことを言っていた。
なんでも、昨日の夜に客間の一室に《旅人》の彼が入るとこを見たのだが、呼んでも返事が返ってこず、仕方なしに部屋の扉を開くと、そこには彼どころか誰の姿もなかったという。
しかしその後、件の彼は別の場所で何事もなく見つかった。
きっと給仕の者は寝ぼけでもしていたのだろう。
――昨日といえば、雲一つない夜空に満月が輝く良い夜だった。
「……?」
「何やら雲行きが怪しくなってきたんじゃないッスか?」
「うん。もしかしたら、さっきチマが言っていたことが当たりなのかも」
九王暦591年 イトスギの月 22日
おかしい。
最近、やけに頭がぼやける。
彼は仕事のし過ぎだと言ってくれた。
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