SAO編
第二章 曇天の霹靂
2.鏡の表裏
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厳しい現実をキリュウさんが口にした。
パーティーが半分に減り、尚且つ夜間の強化されたアンデット系モンスターに、どうしても探索は慎重にならざるを得なかった。
レベルが十も低いモンスターたちが手強く感じる。
聖水が尽きれば、モンスターにまともにダメージを入れることも難しくなる。出口も解らない状況でのそれは、絶望的だ。
このままレイアと――美緒や佳奈美に会えなくなっちゃうんじゃないかと、怖くなったあたしは唇を噛みしめた。
「え……?」
ふわっと、頭の上に温もりを持った重みを感じた。
視線を上げてみると、横に並んだキリュウさんが視線を窓の外に向けながらあたしの頭に手をのせていた。
「……大丈夫だ」
瞳を閉じて、いつもの感情のない表情でキリュウさんは言う。
「諦めるな。道は必ずある」
それは、ありきたりな励ましの言葉。
人によっては陳腐と言うかもしれない。
けれど、あたしには解った。
――声が震えてる。
恐怖で、という印象じゃない。
これは、慣れないことをしているからというふうに感じる。
「……レイアもチマも、俺たちを探してくれているはずだ。――――《仲間》を、信じよう」
応えないあたしを心配したのか、キリュウさんは言葉を重ねる。
触れている手のひらから、優しさが滲んできたように錯覚してくる。
キリュウさんは他人と接することに慣れていないと言っていた。
その彼が、不器用に、でも一生懸命にあたしを励ましてくれている。
トクン、トクンと。鼓動が少し速くなる。
その心地よさに、あたしはさっきまでの暗い感情は消えていた。
「はい……あたし、諦めませんっ!」
気力充実。気付けばあたしは満面の笑みをキリュウさんに向けていた。
◆
九王暦591年 ヒムロの月 15日
《旅人》をしばらく我が館に泊めることにした。
予想していた通り、彼は他の地から《移動》してきたらしい。
だが、どうやって移動してきたのか、それが解らなかった。
彼はどうやら《移動》によって記憶障害を起こしているらしい。《移動》の部分だけが頭に靄がかかったように思い出せないという。
掛り付けの医師は、外的損傷は見受けられないため、しばらくしたら記憶が戻る可能性が高いと診断した。
円盤状に切り取られた我が領地同様に、幾重にも重なった別の地。
もし彼の地と交流ができれば、生活はより安定するだろうし、この異常事態の原因も解るかもしれない。
故に、《旅人》には客間の一室を貸し、療養させることにした。
「記憶喪失ぅ?」
「物語としては在り来たりな展開だけど、此処か
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