SAO編
第二章 曇天の霹靂
2.鏡の表裏
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
◆
「ハァァァ!!」
「――せいッ!」
点在している燭台の弱々しい明かりに照らされた暗い通路。
あたしとキリュウさんは敵モンスターを倒しながら洋館の中を探索していった。
あれから一時間以上が経過した。
窓の外は昼間と一転、雷雲と降りしきる豪雨で景色すら見えない。
隠しダンジョンである洋館内の構造は、元居た場所とあまり変わらなかったこともあり、あまり迷わずに済んでいる。文字通り、鏡映しのように左右対称の館だ。
だけど、問題はモンスターの方だ。
元居た場所――《表の館》と呼ぶことにした――では、スケルトン系やゾンビ系のモンスターが多かった。
けれど、鏡を通り抜けた此方側――《裏の館》では、アストラル系のモンスターが多い。
実態を持つスケルトンやゾンビは祝福バフがなくても、通常の武器でもある程度のダメージは与えられるが、アストラル系モンスターには実態がない。つまり教会での祝福バフが切れた今となっては、聖水を使用してバフを得られなければモンスターにダメージを与えられないということだ。
戦闘を避けようにも、《表の館》とは違う巡回経路を持つアストラル系モンスターたちが壁をすり抜けて襲ってくる。
キリュウさんの《索敵》スキルで敵の位置がわかっても、《裏の館》にはまだ巡回するモンスターたちはいっぱいいる。
《表の館》へ戻る方法を探しながら敵との遭遇を避けるのは不可能だった。
「……あっ」
聖水の効果がまた切れた。
あたしの持つ片手剣《シックライト・ソード+10》を包んでいた白光が薄れて消える。
「スイッチ!」
「あ、はい!」
すかさずキリュウさんがあたしとモンスターの間に割り込む。
対峙していたモンスター《ロイトリングレイス・シャドウ》に槍による三段突きを見舞った。
黒い霧が集まったかのような怨霊が繰りだす伸びる手による異常状態付与攻撃を紙一重で避けながら攻撃を重ねていくキリュウさん。
あたしがもう一度参戦することもなく、数秒後、敵は砕け散った。
「……聖水のストックがもう残り少ないな」
「はい、あたしもです……」
あたしたちは安全地帯、二階東棟の中程にある部屋へと辿り着いた。《表の館》とは逆の場所にあるばずという推測は当たった。
連続戦闘の緊張を解き、しばしの休憩をとりながら今後の方針をキリュウさんと話し合う。
問題は聖水の数だった。
二人の残数を足しても、残りあと八個。
バフの効果時間にすれば四十分。二人で使えばその半分しかもたない。
「一時間以上かかって、東棟の二階と三階は探索しましたけど、特に何もありませんでしたよね?」
「……ああ。このペースで東棟の一階、そして西棟全てを探索するのは不可能だ」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ