暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
2.鏡の表裏
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よね? さ、続き続きっ♪」
「……」

 レイアが、この子には今後絶対私の日記には近付けさせないようにしよう、と思っているような顔をした気がした。



 九王暦591年 ヒムロの月 14日

 あの《災厄》から、既に五年近くの月日が流れた。

 私も、我が領民たちも、少し前に比べればずいぶんと落ち着きを取り戻した。
 世の不条理に悲観しようとも、人間である限り腹は減る。
 他領や他国との交易が望めない以上、自給自足は間逃れない。

 ようやく田畑や酪農も軌道に乗り、未だ黒パンだが、食事も改善の兆しを見せ始めていた。
 領地では子供が生まれたという報告もあった。

 少しずつではあるが、この暮らしに慣れ始めている我らが居た。

 そして今日、我らに再び変化が起きた。

 一人の《旅人》が、我が館を訪ねてきたのだ――――



「……この日記、この館の主だった領主さんが書いたもの、かな?」
「我が領民たち、我が館って書いてあるし、そうみたいッスね」

 わたしたちがこの日記から得られたのは、恐らくSAOの世界設定に連ねたものらしかった。

 ある日突如として、《九連合王国》という人間族の国に所属するとある伯爵領が、地面ごと巨大な円盤状に刳りぬかれて空へと引き上げられた。
 そして、何処(いずこ)からか顕れた同じような巨大な円盤が幾重にも重なり、故郷の遥か上空にて浮遊するようになった。
 当然、領主も領民も、誰もが驚愕した。前兆もなくいきなりの事態だった。
 領民たちは領主の下へと殺到した。どうしてこうなったのか、助けてくれ、元に戻してくれと。
 領主は苦悩した。自分にも解らないのだと。自分に訊かれても答えられないのだと。
 懇願する領民の声についに耐え切れなくなった領主は、人里離れた別荘に隠遁した。

 領主の責を放棄したのだ。

 自領の民に応えることが出来なかった自責に悩み、原因不明の理不尽なる現象へ恨みを募らせて約五年が経過して、少しずつ異様な環境にも順応していった。

 そんな頃に領主の館に訪れた《旅人》。
 それは《他の階層》から移動してきたという事実に他ならなかった。

「ほむほむ? これで他の階層と交流が出来るようになって……ってことッスかね」
「ううん。もしそうだったら、《こんな状態》にはなっていないと思うよ」

 レイアの言葉にわたしは室内を見渡した。
 確かに、これで万々歳、めでたしめでたしという感じだったら、こんなにも寂れてボロボロな館にはならないと思う。アンデット系モンスターがうじゃうじゃと出るこんな館には、なっていなかったと思う。

「レイア、続きを」
「……うん」

 わたしの促しに、レイアは次のページをめくった。


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