暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
1.不死者の館
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が降ることはないが、一週間に二、三度は台風ような雷雨が起こる。

「だよね……。ここまでベタだともしかしたらボスのほうも……」

 幸いにも街を出てから此処まで、若干風は強いが雨は降らなかった。
 雨は視界も悪くなるし、俺たちが愛用している革や布製防具は、金属製鎧よりも水を含んだ際に重くなる割合も高く設定されている。
 更に言えば、水を浴びると力の増すモンスターも少なからず存在する。この十八層でいえば確か《インサニティ・ボジャノーイ》という猫髭の生えた蛙人間のようなモンスターだったか。

「ボス、洋館の主……怨霊とか吸血鬼とかかな?」

 第十八層の主街区《オズコーン》から伸びる街道を迷宮区へ向かう道とは逆方向の分かれ道を行く。
 濃い鉛色雲に遮られ、昼前だというのに薄暗い森の中をモンスターを倒しながら進むと、山と山のちょうど境の麓に、木々に隠れるようにしてその洋館は建っていた。

「……例えボスがいたとしても、今回はボスと戦う必要はない。要は布革製防具を落とすモンスターを多く倒せばいいのだから」
「あ、それもそうでしたね」

 洋館の周囲に敵は居ない。入口付近は安全地帯になっているようだ。
 俺たちは目の前の洋館を見上げた。
 レンガ造りの四階建てはあろうか。かなりの大きさだ。
 正面中央には屋根付きの豪奢な両開き扉。鳥や麦穂をあしらった紋章が描かれていた。

「……最後に装備を確認しよう。各自、自分の武器防具、回復アイテム等の点検を」
『はいっ』

 主街区の教会で祝福を受けてから約一時間半が経過した。
 対アンデット用支援効果(バフ)は残り四時間強。十分に時間は残っているとはいえ油断は禁物だ。
 俺はシステムメニューウインドウの装備画面から自分の得物である槍《トレンチャント・スピア+9》に祝福バフアイコンが付いていることをもう一度確認し、武器防具の耐久度、アイテムストレージの各種アイテム、即時取り出し可能なウエストポーチ内アイテムを再点検した。

 予想以上に時間がかかってしまった時のことも考え、各自十個ほど聖水を所持している。
 聖水は教会での祝福よりは効果は弱いが、武器にかけることで五分間だけ対アンデット支援効果を得られる。更にアンデット系モンスターにぶつけると強ダメージを与えられたり、飲むと《呪い》のバッドステータスを回復出来たりもする、持っていて損は無いアイテムだ。

「……行こう」

 全員が準備を終えたのを確認して、俺は大きな扉の取っ手に力を加えた。


 ……ギ、ギギギギギィィ


 重々しく響く音とは裏腹に意外とすんなりとその重厚な扉は開いた。
 中は真っ暗闇かと思われたが、俺たちが入るなりいくつかの燭台に灯がつき、建物内が鈍い明かりで照らされた。


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