SAO編
第二章 曇天の霹靂
1.不死者の館
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『オォォォオォ……――』
「ひぅっ……」
燭台の鈍い灯に照らされた暗い暗い廊下。
わたしとレイアが隠れている鎧飾りの影の前を、半透明の白い靄のようなものが呻り声を上げながら通り過ぎる。
レイアが上げた微かな悲鳴に気付かれなかったことにわたしは安堵した。
「い、行ったかな?」
「……ぽいッスね。ハァァ〜」
胸を撫で下ろしながら止めていた息を吐き出す。
街の教会で武器にかけてもらった祝福――対アンデット用のバフ――は既に切れている。教会の祝福より効果は弱く持続時間も短いが対アンデット用バフを何時でもかけられるアイテム『聖水』はまだストックがあるけど、何があるかわからないこの状況だから、極力戦闘は避けて温存している。
「でも、いつまでも隠れていられないし、なんとかして早くあの二人と合流しないと……」
「そうッスよねっ。そんでこんな怖いところさっさとオサラバッスよ!!」
そうだ。早くキリュウさんとネリーと合流しなきゃいけない。
もちろん、怖いというのもある。
それに、いつも頼りにしていた人が傍に居ないというのは凄く、心細い。
更に周りに徘徊しているのはおどろおどろしいモンスターばかり。
ホラーものは別に嫌いじゃなかったんだけど、本物にしか見えないゾンビや幽霊が間近に迫ってくるビジュアルはこう、生理的に忌避感を覚えて仕方ない。
――つーかね。それよりもッスよ!?
今! 向こうは! ネリーとキリュウさんが! 二人っきりっ!!!
いけない。それはいけないんじゃあないッスかね?
アレですよ、吊り橋効果ってあるじゃないですか。いつもだったら基本的に三人一緒だからなんというかキリュウさんの気配りも三人分で平等だけど……今あちらは若い男女が二人きり。しかも敵地の真っ只中という危機的状況!
男女の仲が進展するシーンとしてはお約束過ぎるって思わないかねっっ!?
……それは。
それは――――
「――なんとしてでも阻止せねばっっ!! ッス!」
親友だとて恋敵! 自分の知らないところで好きな人と親友の仲が進展していくってのは胸がもやもやしすぎるよ!
せめて、目の前だったらいいから! そうすれば邪魔――ではなく牽制――でもなく――えーと、なんていったらいいのかわからないけどフェアだと思うからっ!
わたしは自分の考えに大きく頷いた。
「ちょっ。チマ、声が大きい……! あとしゃがんで……!」
「あ」
隣のレイアに小声で諌められて自分の挙動に気付く。
知らず知らずのうちに立ち上がってしまっていたらしい。鎧飾りの影からは完全にはみ出していて既に隠れている意味はない。
「チマ……チマ……!」
レイアがわたしの裾を引っ張って早く
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