暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
As2.村正
[10/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
が臭くて授業に集中できませーん』

『根暗なやつ。なあ、なんでオマエ、生きてんの?』

『さっさと死なねぇかな〜』

『死ねよ。あ、でもここで死ぬのはやめてな? 自分の家で死んでくれ』

『アッハッハ』

『あっはっはっは』


 目の前が真っ白になる。
 あいつらの事を、俺を虐げてきた奴らのことが、思い出したくもないのに次々と浮かび上がる。

「――リーダー。もうよくね?」

 腰から剣を抜きながらそう言った男の顔が、学校時代のむかつくあいつらの顔と被った。
 そしてファムの姿が、学園時代の俺と被る。

「…………くっ」

 その下卑たニヤケ顔が、無償にむかついた。――――殺してやりたいほど。








「なんだ、おまえは?」
「あん?」

 気付いたら、俺は男たちの背後五メートルほどの所に立っていた。
 いや、《気付いたら》という表現はおかしい。確かに自分の意思で此処に立った。
 が、このときの俺は正常じゃなかった。と後になって思う。

「…………五月蠅ぇよ……」

 酷く、五月蠅かった。
 目の前のこいつらが喋ると、過去のあいつらの声まで頭の中に響いてきやがる。
 人を馬鹿にして、見下すような声音。
 むかつく。屈辱的だ。殺意を覚える。

「……あ」

 男たちの野太い声とは違う、幼さの残る声。
 俯いていたファムが、俺に気付いたようだ。

「あ……に、逃げて下さい! 早く、逃げて下さい!」

 必死に、とても必死に、既に涙を浮かべながら俺に逃げろと言うファム。

「あ? なんだ知り合いか?」
「へっへ、ちょうどいいじゃん。カモが増えたってことね」

 下種が、下種らしい戯言を吐く。
 俺もこいつらの標的になったようだ。

「駄目です! 逃げて下さい……――――ムラマサさん……っっ!!」




 ――そう、だ。俺のSAOでの名は《ムラマサ》。




 以前、授業で教師が言っていた妖刀村正からとった名だ。

『――自身の持ち主だけじゃなく、持ち主の家族や友達、周りの者まで呪い殺してしまう。つまり自他共に不幸にしてしまう刀――』

 俺はそれを欲した。自分がどうなっても構わない。俺を虐げ、絶望させる俺の周りの連中を片っ端から殺してやることができるのならば……!
 しかし、現実にはそんなものは無い。
 だから、思ったんだ。

 ――俺自身が……妖刀になれば良いんだ。

 このSAOでは、それが出来る。この無慈悲な世界では出来てしまう。
 強くさえあれば、強者が絶対のこの世界ならば、気に入らない全てを消すことが出来る。

「そうだ……」

 俺が――――《妖刀村正》だ……!


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ