暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
As2.村正
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なことをしようが、もちろん俺には関係がない。
 俺は歩き出す。何事もなかったかのようにそのガキの横を通り抜けようとした。

「あ、あの! あのっ!」

 しかし、それは阻まれた。

「あのっ! す、すみません!」

 無視して歩き去ろうとする俺を回り込むようにして声をかけてくるガキ。
 何故俺に話しかけてくるのかは解らないが、30メートル以上も付きまとってくるそのしつこさに結局俺は折れた。

「……何だ」

 立ち止まってそのガキに向かい合う。
 ガキは嬉しそうな顔をすると、たどたどしい口調で言ってきた。

「あ、はい! あのですね、そのー……あ、ぼくは《ファム》っていいます!」

 ガキ――ファムが言うには、最近まで一層二層の雑魚モブでちまちまレベル上げをしていたのだが、つい先日、ようやく16レベルになり《階層+10レベル》の最低安全マージンを確保した。それにより意を決して現在の最上層である第六層に来たのだが、迷宮区に到達する前にフロアボスが倒されてしまったという話を途中にあった村で聞いた。折角ここまで来たので、迷宮区を一目見てみようと迷宮区最寄の村を探していたのだが、迷子になってしまった……らしい。宛てなくひとりで歩いているところに運よく(プレイヤー)を見付け、村の場所を訊こうと話しかけてきたという。

 ――つか、ほとんど一本道でどうやって迷うんだよ……。

「あのー、それでー……案内をお願いできないでしょうか?」

 上目遣いで訪ねてくるファム。その姿は、どこか保護欲を駆られる小動物めいていて、突き放すことに躊躇いを覚える。

「…………アルスタに向かう途中だった。付いてくるなら勝手にしろ」

 気付いたら、俺はそう言っていた。
 普段の俺ならば、案内どころか話を聞く耳すら持ち合わせていなかったってのに。

「あ……ありがとうございますっ!」

 自分の不可解な言動に胸の中がもやもやしていた俺だったが、がばっと頭を下げて、本当に嬉しそうに礼を言ってくるファムを見ると、そのもやもやが少しだけ晴れたような気がした。

 それから俺たちはアルスタに向かった。しかし、パーティーは組んでいない。
 あくまでも俺はただ歩いているだけ。このガキが勝手に付いてくるだけというスタンスだ。

「ホントーに助かりました! あのまま誰にも会えなかったらどーしよーかと思ってました!」

 道中、ファムはどうでもいいことを引っ切り無しに話しかけてきた。
 俺は適当な返事と相槌をするだけだったが、ファムは何故か嬉しそうにアルスタまで話し続けていた。

 そして俺も――どうしてか、表情(かお)に出しているよりは、それを鬱陶しいとは感じていなかった。

 午前十時。無事アルスタへ着いた俺
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