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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
As2.村正
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んて顔で消えていくんだ。最高すぎる。
 欲を言えば、血の滴る姿も見てみたいが、SAOは一応全年齢版。スプラッタは流石に無い。

「こ、殺し……やがった……」
「あ、あぁあ……」
「笑って、やがる……く、狂ってる!」

 ――だから物足りない分は、残りのクズの間抜け顔で我慢するか。









「て、転移! 《エルージ――ぐあっ!」
「………………」

 最後の間抜け顔を噛みしめつつ、快感に身を震わせる。
 SAOベータテスト時でのPKを思い出した。やはり、リアルな仮想世界でのPKは堪らない。まるで本当に人を殺しているかのような……。

「あ……あぁ……」

 人の声が聞こえた。怯えた幼子のような震えた声。
 無意識にその声の方を向く。

「ファ、ム」

 一ヶ月ぶりに間近で見たその顔は、俺を見て……怯えていた。

「む、ムラマサ……さん」

 その顔で気付く。俺が今、したことを。

『――諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に、諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される――』

 思い出す。茅場晶彦の言葉を。
 俺は、自分のカーソルがオレンジ色になっているのを確認した。

 ――確定だ。

「あ、ぅ」

 俺はファムを見た。
 怯えている。俺に怯えている。人殺しに、怯えている。
 そして、それを見て俺は確信した。

 ――あのとき、断っていてやはり正解だった。

 調子に乗っていたにやけ顔が絶望に変わるのを、悦に浸って見ている俺。
 それが俺だ。俺の本質。クズを見ると、堪らなく殺してやりたくなる。
 一時、感傷になるときもあるが、俺の本質は変わらない。
 きっと正気ではないのだろう。だが、改めるつもりもない。
 普通の感性を持つ者とは根本的に違うんだと思う。
 俺は、こいつ――ファムとは、一緒には居られない。

「消えろ」
「……え」

 俺の最後の良心……いや、単なる自己満足か。
 だが、こいつだけは俺の傍に居て欲しく無かった。こんな俺を、見て欲しく無かった。

「此処から、消えろォォォ!!」
「ひっ! あ……う、うあああ!!」

 涙を浮かべつつ走り去る小さな背中。

 何故かその姿を映す俺の視界は、滲むようにボヤけていた。



 ――この日、俺は本当の《人殺し》になった。
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