アリシゼーション編
序章?彼の世界で待つ者
白亜の塔で待つ者達
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
で重たい。よく見れば灰色の表面には小さく黒い斑点が無数にあった。
変わっていると言えば、中の液体も見たことの無いものだった。紅茶のような鮮やかな色ではなく落ち着いた緑色で、青葉のような独特の香りがした。
「それは『緑茶』って言うんです。紅茶の葉の乾燥させる前のものを使って入れるんですよ。少し苦いかと思いますが、ぜひ飲んでみて下さい」
「へぇ……」
恐る恐るコップを持ち上げ、少し口に含んでみる。やや強い苦味が口の中に広がって驚くが、それが薄れていくにつれてなんとも言えない、渋い旨味が口の中に残った。
「……おいしいです」
素直にそう言うと、彼女は嬉しそうに言った。
「ありがとうございます。……このお茶は私の故郷で飲まれているお茶なんです。レイもお気に入りなのよ」
「そうなんですか。……あの、先生とは……」
「同郷です。……もう、帰る事は無いだろうけど……懐かしいです」
「あ……」
故郷に帰れない。それは自分と同じだった。……だとすれば、先生達は自分と同じように…………
「……ごめんなさい。暗い話になってしまいましたね」
「っ??い、いえ。私こそ、失礼な事を」
「いいんです。……貴女も、家族に会えなくなってしまったんですよね?」
「……はい。……っ、え??」
ふわり、と暖かなものに包まれる。それが目の前にいた女性のものによるものだ、という事に気がついたのはしばらくしてからだった。
「……ごめんなさい。私達のせいで、貴女のような子が出てくるのは分かっていたのに……私達は、《彼女》を止められなかった」
「あああ、あの……」
頭が混乱の極みに達し、呂律が回らなくなる。
そんなアリスを他所に女性はなおも優しく彼女を撫で続けた。
「……少し、話を聞いてくれますか?」
震えるような、細く綺麗な声をかけられ、アリスは正気を取り戻す。
顔を離して見上げた相手の顔を見て、アリスは思わず息を飲んだ。
そして、彼女の故郷の話を聞いた。
《ダークテリトリー》。それは人界の果て、飛竜を以ってしてようやく越えられる程の高さを持つ山脈を隔てて隣に位置する、近くて遠い場所。
「ああああぁぁぁぁっ……????」
悲鳴を上げ、地面を這い回る全身漆黒の鎧をまとった騎士。そばにはその騎士の愛騎だと思われる黒龍が全身を刻まれ倒れていた。
「…………」
それをさほど興味を示さず一瞥した人物ーーー漆黒の騎士甲冑を身にまとい、くすんだ紅色のマントを翻したレイは左手に掴んでいた別の暗黒騎士を地に叩きつけた。
「ぐ……」
「……さて、お前はまだ喋れそうだな。お前
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ