SAO編
第二章 曇天の霹靂
As1.望んだ世界
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二年、十一月六日、日曜日。
今日の午後一時から、SAOの正式サービスが開始する。
体調は万全。ベータ時代のデータもしっかりと頭の中に入っている。
仕事が夕方の五時からなので三時間しか今日はプレイできない。ベータの情報を以って、他のプレイヤーに先んじてスタートダッシュをするのは無理そうだが、だからといって仕事は休めない。
――これ以上、おっさんの信頼を裏切るような真似はしたくねぇ……。
ようやく安心できる居場所が出来たんだ。その居場所を作ってくれた恩人には報いなければ。
しかし、そう思いつつも、それとは真逆の考えも俺の頭の片隅にはあった。
――人間関係ってなぁ、やっぱ面倒だ。いっそ、SAOの世界が本物になってくれれば……剣さえあれば全てが手に入る、そんな世界に、変わってくれれば……。
「……そんなもん、叶わねぇ夢と解ってる。解ってるんだ……」
誰に言うでもなく、俺は自室でひとり愚痴る。
この世界は残酷で、救いは限りなく無い。ゲームのように頑張ればなんでも出来るというものでもない。金持ちの子供が金持ちのように、貧乏人の子供が貧乏なように。生まれ育った環境というのは、人間の様々な能力を伸ばす上で大事なファクターであると同時に、覆すことが出来ない不平等なものでもある。
他人が当たり前のように持っているものを、俺は持っていない。
そして、今の世界って奴は、持たざる者に対して優しくない。
――力チカラが欲しい。望んだもの全てを手に入れることの出来る力が……。
俺は、そんなことを思いつつ、ナーヴギアをかぶった。
「……《リンク・スタート》」
午後四時二十七分。
ログインしてすぐ、SAOの舞台である浮遊城アインクラッドで一番最初のプレイヤーの出発地点《はじまりの街》を見周り、これから幾度となく使う重要な施設をいくつか回ってベータ版との差異を確かめ終わった俺は、さっそくフィールドに出てモンスターを狩っていた。
ベータと正式版じゃ変更箇所もあるかもしれない。武器や各種アイテムの値段、宿屋などの各施設の料金、NPCに話しかければタダで貰えるアイテムなど、はじめに確認しておいて損は無い。それらを知っておけば、狩りに出た際の引き時というものをある程度計算できるからだ。効率良く狩りをするのならばこれらの情報は大変重要だ。
現在の俺のレベルは3。つい今し方ようやくレベルアップした所だ。
やはりこの世界は良い。どうしてか、俺にはこの世界のほうが《生きてる》という実感が得られる。この調子でもっとプレイしていたいのだが。
しかし、この辺でログアウトしなければ仕事に間に合わない。けっこう時間もギリギリだ。
激しい抵抗感を感じながら、俺はシステ
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