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SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第二章  曇天の霹靂
As1.望んだ世界
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ーガスの新作VRMMO《ソードアート・オンライン》のベータテスト参加者の募集要項だった。
 最先端技術で造られた美麗な仮想世界で、実際に自分の手で、自分の意思で剣を振るって敵を倒すことが出来る《剣がプレイヤーを象徴する世界》。
 俺はその謳い文句に惹かれ、ダメ元で応募した。

 それから一ヵ月後、もうほとんど忘れかけていた頃に、それは届いた。
《ソードアート・オンラインのベータテスト参加チケット》。
一瞬何のことか思い出せなかったが、その意味を理解した瞬間、不覚にも「うぉっ」と情けない声を上げてしまった。
俺は貯金のほとんどを使って急ぎナーヴギアを購入し、SAOのベータテストに参加。そこで初めて《完全(フル)ダイブ》というものを体験した。

 ――最高、だった。

 普通のゲームでは味わえない、自分自身の手で敵を殺せるという所に、俺は心頭した。
 特に最も俺を熱くさせたのがPKプレイヤーキルだ。人間の操作するプレイヤーのHPがゼロとなり、アバターが光となって消える間際のあの悔しそうな顔。あの情けない顔……。
 堪らない快感だった。
 もっと。もっと。もっと、もっともっと……っ。
 もっと殺したい。もっともっと殺したい。
 俺の頭の片隅で、そんな想いが次第に大きくなってくるのを感じていた。









「――バカヤロウッ!」

 仕事の最中、おっさんに怒られた。
 SAOのベータテストが終わってしまい、あの快感が得られなくなった俺は、他のどのゲームをしても渇望する欲求を満たせず、日々を悶々と過ごすしかなかった。
 しかし、ようやく明日、待ち望んだSAOの正式サービスが開始される。
 あの世界をもう一度駆けまわれるのだ。
 ベータテストのときのことを思い出し、正式サービスに思いを馳せていた俺は、つい仕事中にボーっとしてしまった。

「…………すんません」

 失敗をしてしまったときの、いつも通りの対応をする。
 このおっさんは一時いっときは怒るが、すぐに切り替えてくれる。サバサバした性格なので、後に引きずらない。不器用でたびたび失敗してしまう俺にとって、この性格には助けられてきた。

 ……だが、今日は違った。

「ふざけるのも大概にしろよ、ガキっ! ……不器用なのは別にいい、慣れるまでやらせるだけだからな。無愛想なのも別にいい、やるべきことをやってれば文句は言わねぇ。――だがな、仕事中に他の事を考えて呆けてる奴は邪魔でしかねぇ。やる気がねぇなら帰ぇれ!」

 結局、俺はその日、働かせて貰えなかった。
 その後アパートに帰った俺は、恩を仇で返すようなことをしてしまったことに後悔しながらも、やはりSAOのことが頭から離れず、複雑な心情のまま翌日を迎えた。

 二〇二
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