SAO編
第二章 曇天の霹靂
As1.望んだ世界
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まくるという妖刀《村正》。
――欲しい。
そう、思った。
自分のことなんかどうでもいい。俺の周りに居る奴らを殺せる力を手に入れられるなら、俺はどうなったっていい。
……だが、そうは思っても実際にそんな妖刀なんて存在はしない。俺は、それを渇望しつつも、ムカつく日常に埋もれていった。
その後、中学を卒業した俺は家を出た。無論、母親には無言でだ。餞別として三十万ほど黙って貰ったが、今までのことを考えたら慰謝料としても安すぎるだろう。
俺は歩きで県を三つほど跨ぎ、格安の訳あり物件(家賃月一万、四畳一間、共同トイレ、風呂無し)を借りた。そして個人経営の居酒屋に頼み込んでアルバイトをさせてもらうこととなった。チェーン店じゃないのは、家出した未成年者である俺は雇って貰えないだろうと思ったからだ。
居酒屋の店主であるおっさんは、昭和の頑固親父みたいなその容貌通り厳しい人だった。愛想の無い俺を拳で教育したり、一回ミスるだけで店中に響くほどの音量で怒鳴られた。
……だけど、いくら失敗をしても俺をクビにするなんてことはしなかったし、十五という年齢で学校にも行かずに一人暮らしをしている理由も聞いてこなかった。
ある日、俺はそのことを聞いてみたことがあった。
「……おっさん。今更だけどさ、訊かないのかよ? 俺がここに居る理由。こっちとしちゃありがてぇけど、そっちからしたら不安なんじゃねぇのか……?」
「…………ふん。お前みたいなガキが今こうしてるのを考えりゃ、訳ありなのは当然思いつく。――そうしなけりゃいけなかった訳があることもな。嫌なら最初から雇いやしねぇよ。いいから無駄口叩いてねぇで仕事しろ」
「…………」
俺は初めて、ちゃんとに《俺自身》を見てくれる人を見つけた気がした。
基本的に居酒屋は夕方から深夜までなので、俺はそれまで暇だった。別のアルバイトをしようかとも考えたが、居酒屋の仕事は結構体力を使うので、二つ同時は無理だった。なので俺は、暇つぶしのために初給料で中古の安いテレビとゲームを買った。主人公の侍を動かし、何人もの敵を切り捨てるアクションゲームだ。
俺はすぐにそれにハマった。俺に斬り殺される敵の顔が、今まで俺に辛酸を舐めさせてきた奴らに見えたからだ。
それから俺は、アルバイト以外の時間をゲームに注ぎ込んだ。そのほとんどが剣で人を殺すようなものばっかりだったが、此処には親は居ない。俺を注意する者なんて誰も居ない。……俺は、自由を手に入れたと思った。
十八歳になり、未だアルバイト生活だが、一応金もそれなりに貯まった。
そんな頃だった。
俺はバイトまでの暇潰しにコンビニで雑誌を立ち読みして新作ゲームのことを調べていた。そこで目に入ったのは、大手ゲーム会社ア
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