SAO編
第一章 冒険者生活
Ex2.裏方の仕事人
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否、気にする余裕もないのかな。
「昨日、この酒場でとある話を耳にした。《バリと呼ばれる者が、ボス戦の騒動に乗じてビーターに何かをする》という話だ」
「……」
キリュウの言葉を聞いたとき、最初に思ったのは《ついに来たか》だった。
いつか来るとは思っていたが、やはり予想よりだいぶ早い。良い意味にも悪い意味にも、この世界にプレイヤーたちがすっかり慣れたときには、来るかもしれないと思っていたが。
ネトゲをする大多数は、優越感を感じることを目的とする。誰よりも多い時間を費やせば必ずトップに立てる世界、それがゲームであり《ネトゲ》だ。しかし逆を言えば自分よりも多くの時間を費やす者が居ればトップには立てない。そこで嫉妬が生まれ、積り積れば憎悪となる。結果、妨害をする輩が出てくることになる。無論それは非マナー行為であり、蔑まれる事でもあるが、その手の嫌がらせは消えることは無い。顔の見えないネット上ということも、そういう行為をすることの罪悪感を薄めているのかもしれない。
そしてこの《ソードアート・オンライン》。ネットゲーマーたちだけのコミュニティーと化したこの仮想世界で、プレイヤーたちの悪意の矛先として《ビーター》が選ばれるのは遅かれ早かれ解っていたことだ。
ビーターという呼称が生み出された経緯には、実は私も関係している。
第一層のボス戦の前日、ボスについての情報を放出した(一応、ベータテスト時のものと注釈は入れた)が、戦いの中でボスは予想外にも上層のモンスターが扱う《カタナスキル》を扱った。
これはベータテスト時とは異なる点だ。これにより部隊は混乱、しかもレイドのリーダーが真っ先に死亡するという事態にさえなった。撤退するしか無いという時に、キリトが戦線を一人(正確には女フェンサーと二人)で立て直し、その後LAまで取ってボスを倒すことと相成った。
しかし一般レイドメンバーは、キリトがカタナスキルに詳しかったことを、《ベータテスターだからビギナーの知らないボスの力を知っていた》と捉えた。これではテスターとビギナーの溝が更に深まると考えたキリトは、『自分は他のテスターとは違う。テスターであり重度のMMOゲーマー……ビーターだ』と宣言し、テスターに向かうだろう敵意を自分一人に集めようとした。
彼は第一層にして一般プレイヤー全員を敵にまわすような発言をしたのだ。他のベータテスターに恨みの矛先が向かぬように。
私は、ボスの情報はベータ時のものと明言していたものの多少の責任を感じ、ビーターに関する真偽含めた様々な噂を流すことで、一般プレイヤーたちの《ビーター像》をあやふやにしようとした。
なのに、今回の件だ。正直、溜め息が出そうだよ。
「この話が真実かどうかを、調べて欲しい」
その声に、
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