SAO編
第一章 冒険者生活
Ex2.裏方の仕事人
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『――会って、話がしたい』
思わずドキッとくるような簡潔なメッセージに、私はいやいやと首を振った。
短い付き合いだが、あの無愛想な少年がそんな色気のある話を振ってきたことなんてあった試しは無い。となると、メッセージでは伝えきれないような複雑な話か、もしくは文章に出来ないほど曖昧な話か。どっちにしろ実際に会ってみなきゃ解らないか。
私は了解の返事と、落ち合う時間や場所の確認をメッセージで送った。
「……さテ、今日はあとやらなきゃいけないことハ、と」
約束の時間までのスケジュールを頭の中で組み立て直す。人に会うのが二件、メッセージを送る用事が三件。ギリギリになってしまいそうだが、どうにか間に合うだろう。
「――にしても、初めてだネ。あの子の方から話がアルなんテ」
ただの話とは思えない。わざわざ直に会って、だなんて。もしかしたら私の情報屋としての力を必要としているのかも。
私は厄介事の雰囲気を感じながら、人気の無い道を走り出した。
予想より少しだけ早く予定していた要件が終わり、私は余裕を持って約束の場所へと向かった。
中央広場の近くにある大きな酒場とは違い、何と言うか侘しい酒場だ。光源が少ないのか全体的に薄暗く、何より人が全く居ないということが侘しい雰囲気を上乗せしていた。
自分以外、誰も居ない店の中を歩き、カウンターへ腰掛ける。時刻表示を確認すると指定した時間まであと三分。今はエールという気分ではないので、ウイスキーをロックで注文した。
SAOのシステム的には酔えないが、場の雰囲気というものに酔いながら、ちびちびとそれを飲みつつ奴を待つ。
デジタルな時刻表示を見つめながら待っていると、ちょうど下二桁にゼロが並んだ所で、後ろのスイングドアが開き、カランカランとカウベルの音が店内に響いた。
「――デ? 珍しく呼び出したりなんかシテ、どうしたんダ? しかもあの三人娘は抜きで、なんテ……」
いつも会うときと全く変わらない無表情面の少年に、さっそく問いを投げる。
切れ長の蒼い瞳に真一文字に閉じた口、瞳と同色の少し長めなストレートヘア、百七十近くはあろう背丈にGジャンとGパンのようなデニムに良く似てる革製の上下を着込んでいる少年――キリュウ。中学生とは思えない鋭い眼差しの圧力に押されているのに気付かれないように、私は意識して不敵な笑みを浮かべた。
「……いきなり済まない。お前に調べて欲しい事があって呼んだんだ…………アルゴ」
「にはハッ。まあ、そりゃそうだろうナ」
目を伏せて謝るキリュウの顔に、予感が当たりそうだなと苦笑する。
だが依頼だというならはっきりさせておくことがある。私はキリュウに向けて口を開いた。
「ヒトツ、言っておくけどネ……個
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