暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第一章  冒険者生活
12.ビーター暗殺
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 最初、古樹の巨人は右腕を前に出した。
 地面に水平に伸ばした右腕の先端、太い根がてのひらを模している所に、変化が現れる。
 腕の先端の何本もの根が、今度は地面と垂直に伸びていく。
 伸びて、伸びて、重なって、先端が纏まって、尖る。

 ――剣……?

 鋭い刃は無い。どちらかと言えば棍棒に近いと思う。
 だけど巨人のそのシルエットは、《剣を握った人》に見えた。
 そして、みしみし、と根の身体を軋ませ、巨人はゆっくりと剣を振りかぶる。

 ――あ、見たことある。

 ううん。見たどころか、つい最近、自分も使った。
 右足と右肩を前に出して剣を左後ろへ振りかぶるあの初動作(プレモーション)は――

「――重範囲攻撃(ホリゾンタル)、来るぞー!! おいそこの盾無し! もっと下がれよっ!!」
「ボスの後ろ側に回れー! まだ間に合うから!」

 叫びと共に、プレイヤーたちの流れに押される。

「キャッ!?」
「うおーッス!?」
「レイア! チマ!」
「……ボスの動きよりも、俺たちは味方側の動きを意識していた方が良いようだな」
「あ……キリュウさん!」

 まるで満員電車で急ブレーキがかかったときのような人波に、レイアとチマが流されそうになったけど、すかさずキリュウさんが防波堤になってくれた。
 キリュウさんの言うとおり、確かにこんなプレイヤーの人たちに囲まれた状況だったら、ボスの一挙手一投足よりも身近のプレイヤーたちの動きを見ていた方が良いかもしれない。急に押されるのは危ないしね。

「支援部隊はボスの側面に移動します! 最初の攻撃を凌いだら最前列のPTから攻撃を開始して下さい! 威力よりも硬直の少ない単発系でスイッチを重ねます! 僕が合図しますんで攻撃後は左右に下がって後続とスイッチして下さい!」

 号令役の《ポスキム》さんが、支援部隊全員に向けて叫んだ。
 壁部隊の後ろを移動しつつ、ボスのホリゾンタルの範囲外まで逃げる。あたしは普段から歩くのが速いほうだから、団体移動特有の遅々とした歩みに内心じれったい思いをした。
 そして、ちょうどあたしたちが目的の場所に移動した瞬間、ボスは動いた。

「ボッ、ボッ……ボォオオオオオオオ!!」

 水色に発光した人の胴よりも太い丸太のような剣。キラキラとその光を軌跡に残し、巨人はそれを思い切り水平に薙ぐ。
 直後、大気をうねらして、一列に並べられたヒーターシールドの壁にそれはぶつかった。

「うごっ、お、押されるー!」「効っくぅ〜〜っ」「叫ぶな! 号令が聞こえねえっつの!」

 ガンガンガン、と盾を弾く音が連続で響き渡り、当たった場所に火花を散らしたようなライトエフェクトをばら撒きながら巨人は剣を振り切った。

「――
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