SAO編
第一章 冒険者生活
10.不穏な会話
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酒か果実を絞って水で薄めたものしかない。俺は酒が苦手……いや偏見だとは解っているのだが少し嫌悪感がある。例えSAOでは酔うことはないといっても、試してみる気さえ起きない。
「――おらっ、賭けに負けたんだから今日はお前のおごりだかんな!」
「ごちになりまーす!」
「なりまーす!」
「ぐっはぁ……ついてねえ……」
頼んでから十秒とかからずに店員が持ってきた果実水を飲もうとグラスを持ち上げたとき、五人の男性プレイヤーたちが店内に入ってきた。彼らはカウンター近くの丸テーブル二つを陣取り、まだ頼んでもいないうちから騒ぎ出した。まるで、ここに来る前から飲んでいたかのようなテンションだが、先も言ったとおりSAOでは酒に酔わない。たぶん、元々賑やかな人たちなのだろう。
「あ、オレもう…………五杯っ!!」
「俺も〜」
「飲みすぎ! つか、頼みすぎだろ!」
「…………」
まだ店内の席はたくさん空いているというのに、一気に騒がしくなってしまった。ルネリーたちが騒がしくしているときは何とも思わないのだが、今俺が感じている嫌悪感は何なのだろうか。
俺は早々に此処を出ようと、手に持った果実水を飲み干そうとした。
「……なあ、お前らは見たかよ?」
が、いきなりトーンの下がった声に無意識に耳を傾けてしまう。
「何を?」
「アイツだよ、アイツ。《ビーター》だよ」
――ビー……ター……?
その単語は度々たびたび耳にしたことがある。だが意味するところはよく解らなかった。
誰かの蔑称だということは雰囲気で解るが……。
「あー、見た見た! 真っ黒い奴だろ?」
「あの黒コート。一層のボスドロらしいぜ? LAとって手に入れたんだと」
「なーんか、レイドのリダ見殺しにした〜とか聞いたけど?」
「ん? 俺は逆。リーダーが先走ってヤられて、戦線が崩れそうになったのを一人で立て直したって聞いた」
「んじゃ、イイ奴なん?」
「でもそのあと、『俺はビーターだ!』宣言でイッキに悪役」
「なんだそりゃ」
果実水を飲み干す間、男たちの話が勝手に耳に入る。盗み聞きなど趣味が悪いと思いつつも、特に聞いてはいけないことでもなし、相手も大声で話しているので問題はないだろう。
「……」
とは言いつつ、やはり多少の罪悪感はある。
俺は空になったグラスをテーブルに置いたまま席を立ち、出口へと向かった。
「――あ、そうだ。ビーターといえばさぁ……《バリ》の野郎が、ついにやるらしいぜ?」
歩く俺のことは気にも留めず、五人は話し続ける。
「んあ?」
「バリ? アイツが何を?」
「おいおい、いっつも言ってたじゃねぇか。…………アイツ、今度こそ《ボス戦の騒動に乗じて、あのビータ
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