SAO編
第一章 冒険者生活
10.不穏な会話
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態勢を崩す。
重心移動中の浮いた右足を払われ、左のめりに倒れながら大げさに驚いた顔をしている敵を横目に、背後に回り込みながら後ろ足を蹴り払う。
そうしてほんの僅かな時間だが、相手の両足は地面を離れた。
上半身を傾けながら地に吸い寄せられる敵。
本来ならば相手に受け身を取らせないために、あと数手ほど工程があるが、この敵には必要無い。
数刹那の後、強かに右肩から地面に衝突するバンデッド。
その衝突と同時に俺は、足元の標的――地に落ちた敵の頭へと槍を突き出した。
己も前のめりに倒れながら真下へと放つことで、全体重を乗せることを容易くした刺突。
体崩しから続く一連の動作からなる技。
東雲流、《骸割》。
側頭部こめかみ辺りを深く穿たれたバンデットはHPの残量を大きく減らし、数秒間もがいた後、貫通継続ダメージによりHPバーは消え去った。
「…………や、やあっ!」
足元のバンデッドが光へと砕け散るのを視界端で確認しながら、やや戸惑いを含めた声に意識を向ける。
――やはり……厳しいものがあるか。
その声の主はルネリー。
今現在、彼女とその双子の姉であるレイアは、普段の戦闘での動きとは精彩を欠いていた。
「……くっ」
特に敵が強いわけでも、窮地に立たされているわけでもないが、二人は今にも玉の汗が浮かびそうなくらい苦々しい顔をしていた。
だが、それもしかたない。今までの敵は化け物然としていたモンスターばかりだった。人外を殺すことと、自分と同じ人間――少なくとも姿形は――を殺すということ。常識的に考えれば後者のほうが物凄く抵抗があるだろう。
――寧ろ、俺のように何の躊躇いもなく相手を攻撃出来る……というほうがおかしいのだろうな。
チマも気にしていないような素振りだが、あれはゲーム内の敵だと割り切っているらしい。そう思い込まなければやっていけないのだろう。それは現実逃避とも言い換えることが出来るが、彼女がそれで心の平穏を保っているのだとしたら、俺には何も言えない。
「うごえっ!?」
残りのバンデットの情けない声が聞こえた。どうやら問題なく倒せたようだ。
戦闘終了を確認すると、チマは地面に剣を突き立て、それに寄りかかって息をついた。
「あ〜〜倒し終わったッス〜〜」
「ふぅ、まだ人型って慣れないよねー」
「うん。それに……」
――このまま、人を殺すことに慣れてしまいそうで……。
言葉にはしていないが、その顔色からレイアの思ったことが聞こえたような気がした。
「……チマ、それの扱いには慣れたか?」
俺はそんなレイアたちに言ってやれる言葉が思いつかず、仕方なしに話題を変えようとした。
「そ〜ッスね
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