五話〜始動〜
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押しのけた。
「知ってるというか、死武王ってのを聞いたことがあるってだけなんですけど……スキルの名前、なんですよね?それも初めて知りましたし。まあ、なんとか探ってみますよ」
にいっと口元を引き上げ、まかせろとトウラが親指を立てる。
「よかった。それでは引き受けくださるんですね?」
「ええ、もちろん。その死武王とやらをお三か……お四方の前に引っ張り出してみせますよ」
ニコニコ顔のティーナに、ギリギリのところでクラディールを思い出したトウラがまたしても笑顔を濁す。
「あ……はは、そ、それじゃあボクは早速」
一瞬遅れてトウラの言いかけたことを理解したクラディールの威圧感に耐えかねたのか、そう言うとトウラは足早に転移門まで歩いていくと、どこか街の名前を叫び、青白い光球に包まれた。
「あ、そうだ!三時間ほどしたらボク戻りますんで、その時またここで――」
という捨て台詞の語尾を引きながら、トウラの姿は光の中に溶けていった。
「……三時間だってさ。その間どうする?」
門に僅かに残っていた光の粒がはじけて消えるのを見つめながら、俺は呟いた。
三時間、未踏破の迷宮を探索するにも、稼ぎのいい狩場へ行って経験値を稼ぐにも中途半端だ。せっかくいいメンツ(クラディールを除く)なのだから、オシャレなカフェでティータイムというのも悪くはなさそうだが、昼食を食べたばかりでというのは女子的にどうなのだろう。
が、悩む俺とは正反対に女子陣はあっさりとあてを見つけた。
「そうだ!アレしようよ!レストランの時のクエスト。たしかこの層に出るでしょ?クリア条件のモンスター」
「それはいいですね。お互いの剣も見ておいたほうがいいでしょうし」
クリア条件のモンスター。そうだっただろうか、思い出せない(思い出したくない)がアスナがそう言うのならそうなのだろう。
時間的にもちょうどよさそうだし、それに決まりだな。そう思い、口に出そうとした、その時、
「あ、そういえばアルゴ、すっかり忘れてたけど俺に話があるんじゃなかったか?」
クエストの内容ではないが思い出した。もともとアルゴは俺を訪ねてきたのではなかっただろうか。
「あ、アア。そうだけド……やっぱりいいヨ。また今度にスル」
まだショックを引きずっているらしく、いつものふてぶてしさが全くない。アルゴはその一言が合図だったのか俺たちに背を向けると、じゃあナと手を振り転移門の光に飲まれていった。
その去り際、彼女が何かを言いかけたのは気のせいだろうか。
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