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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第59話 「第三七代銀河帝国皇帝ルードヴィヒ一世」
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様がフレーゲル男爵の姿を見て、足を止められた。
 何をどういえばよいのか、わからずに口ごもっている。
 すっと立ち上がったフレーゲル男爵様は、ラインハルト様の前に近づき、片膝をつかれました。虚を突かれ、目を見開かれているラインハルト様に対し、恭しくおっしゃられます。

「私ことヨアヒム・フォン・フレーゲル男爵は、ラインハルト・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵閣下に対し、変わらぬ忠節を尽くすことをここに誓います」

 フレーゲル男爵様が、ブラウンシュヴァイク公爵家を継ぐ資格を有するお方が、新しいブラウンシュヴァイク公爵となられるラインハルト様に対して、膝をつく。
 お認めになられたのだ。
 フレーゲル男爵様の態度が何よりも雄弁に、物語っている。
 このお方はラインハルト様を守る盾となる事を言外に示した。

「卿の忠節、ありがたく思う。これからも帝国のため、ブラウンシュヴァイク公爵家のため、力を尽くしてほしい」
「はっ」

 ラインハルト様は先代様に教えられたとおりの身振りで、お答えになられる。
 このお二方は良き主人と家臣になるだろう。

 ■フェザーン ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ■

 帝国からの商船を装った地球教徒の船が行方をくらませた。

「これは陽動だ」

 オーベルシュタインの言に頷きはしたものの、では陽動として次にどこが狙われるのかというと、分からない。
 それはオーベルシュタインも同様だった。
 目標となりうる場所が多すぎるのだ。帝都オーディンであれば、宰相閣下以外には考えられず。同盟でも最高評議会のはずだ。しかしながらフェザーンには明確な目標がない。
 自治領主など、いつでも取り替えの利く一地位にすぎん。

「狙われるとしたらどこだ?」
「オーディンでも同盟でもなくフェザーン。フェザーンにとっての中枢……」

 オーベルシュタインと思わず顔を見合わせる。

「金融機関!! そのネットワークシステムかっ」

 システムのバックアップを指示しなければ。
 オーベルシュタインが頷くと足早に部屋を出ていった。
 急ぐオーベルシュタインの後を自治領主室に所属する配下の者たちが付き従う。
 地球教徒などに好き勝手されてたまるものかっ!!

「ルビンスキーの動向を把握しているか?」

 突然、オーディンから通信が入った。
 画面の向うには迫力のある女性が映っている。アドリアナ・ルビンスカヤ。ルビンスキーの影武者だった女性だ。しかしルビンスキーなどいまや、どうということもないはずだろう。

「奴はプライドが高い。無視されることに耐えられないはずだ。それぐらいなら地球教徒と組んで、後先考えずめちゃくちゃにしてやろうと考える。死なばもろとも、それぐらい破滅志向の男だ」
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