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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第59話 「第三七代銀河帝国皇帝ルードヴィヒ一世」
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りになった今、宰相府から皇帝執務室に移動することになるのだが、いまだ後片付けが済んでいないのだ。
 ハイネセンから帰還し、久しぶりに姿を見せたとき、ラインハルト様の恰好は変わっていた。今までの女装姿から貴族らしい正装をしているのだ。宰相閣下が薄い笑みを浮かべ口を開く。

「どうやらブラウンシュヴァイク公爵家を継ぐ覚悟を決めたらしいな」
「はい」

 ラインハルト様がまっすぐ宰相閣下を見ている。ここ最近、見ることのなかった覇気が、全身からあふれ出しているかのようだ。

「亡き先代ブラウンシュヴァイク公爵は、卿を養子にしたいと私に申し出ていた。まだまだガキだと思っていたからな。先の話だと考え許可していなかったが、いつの間にか男になったか。いいだろう、許可しよう。
 新しいブラウンシュヴァイク公として帝国の政に参加せよ」
「御意」

 すっと頭を下げたラインハルト様は足早に、振り返ることもないまま宰相府から歩き去って行った。

「ラインハルト様」
「追うな」

 後を追いかけようとしたわたしを宰相閣下の鋭い声が制止しました。
 思わず振り返り、宰相閣下見つめ返してしまいました。

「ラインハルトは新しいブラウンシュヴァイク公爵として、一門をまとめねばならん。仲のいいお友達と一緒に一門を迎えるわけにはいかないだろう?」

 声色こそ優しげなものの、そこには明確な制止が込められています。

 ■ブラウンシュヴァイク公爵家 アンスバッハ■

 先代公爵様の甥御であるフレーゲル男爵様が、応接間のソファーに座り、まんじりもせずじっと何事かを考えておられます。ラインハルト様が新しいブラウンシュヴァイク公爵になるのを、止めようと考えているのかと思いきや、その割には目を瞑り、沈思熟考しているご様子。
 話はそう単純なものではないのかもしれません。

「アンスバッハ」
「はい」

 考え込んでおられたフレーゲル男爵様が顔を上げ、私に向かい口を開きました。

「私とて凡夫なのだな〜。惜しいか惜しくないかと問われると惜しく思う。しかしそのような拘りは捨てねばならんのだろう。ずっとなぜ伯父上がラインハルトを養子にしたいと考えていたのかを、私も考えていた」

 独白するようにフレーゲル男爵様がお話になられます。
 このような時は沈黙を守るのが私の役目。返答など必要ではないもの。

「伯父上が帝国のために考えたように、私も帝国のため、ブラウンシュヴァイク公爵家のために行動しよう」

 そう言ったフレーゲル男爵様は何かを吹っ切った、すがすがしい笑みを浮かべておられました。
 ああ、このお方も男になられましたな。先代様にお見せしとうございました。

「フレーゲル男爵……」

 お帰りになられたラインハルト
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