第59話 「第三七代銀河帝国皇帝ルードヴィヒ一世」
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いる。
親を失ったのだ。泣いている少女を前にして、何も言えない自分を情けなく感じていた。
キルヒアイスならなんと言っただろうか……。いや、この様な場面でキルヒアイスに頼る、頼ってしまう。俺は今まで自分の足で歩いてこなかったのかもしれない。独立独歩。一人では歩いていなかった。
ああ、俺はいったい今まで、何をしてきたのだろう。
思いに経験が、肉体に精神が追いついていない。
未熟だ。
人として未熟なのだ。
このままじゃいけない。あの皇太子はなんて言った?
ちゃんと自分の将来について考えておけ。そう言っていたはずだ。
しかし考えてこなかった。そのつけが今ここで現れている。
■フェザーン自治領主室 ブルーノ・フォン・シルヴァーベルヒ■
帝国と同盟で起きた地球教徒によるテロ事件、それはフェザーンでも起きるかもしれない。
オーベルシュタインがテロを警戒して、宇宙港や行政機関の警備を強化している。
ここ最近、穏やかになっていたが、内に秘めた冷徹さが剥きだしになり、自治領主室内では、ドライアイスの剣の鋭さに、背筋を凍らせる者もいる。
「帝国は変わった。そして今も変わろうとしている。だがしかし、ルドルフが作り上げた帝国に引き戻さんとする愚か者ども。地球教の思惑通りにしてはならない」
皇太子殿下、いまや皇帝陛下に即位しようとするお方の訓示が、オーベルシュタインの心に火をつけてしまったのだ。
銀河中に放送された黒真珠の間で貴族百官を前に語る宰相閣下の姿に、部下の多くも目つきが違ってきた。
殺る気だ。殺る気に満ち溢れている。特に平民階級の兵士達。引き戻されてたまるものかという怒りが、こちらにも伝わってくる。
「我らが皇太子殿下、否。皇帝陛下の宸襟を騒がす者どもに鉄の規律を持って臨めっ!! 迷うな。躊躇うな。一歩も引くな。全ての責はこのわたしが持つ!!」
宰相閣下に続いて、宇宙艦隊司令長官ミュケンベルガー元帥の激が、フェザーンにも放送された。
地球教徒たちは同盟に亡命しようとしたらしいが、同盟政府の動きは鈍く。中々認めようとはしていないらしい。
そりゃそうだろう。最高評議会ビルでテロにより、評議会議長のロイヤル・サンフォード氏が亡くなったのだ。冗談じゃねえよ、という気になっても仕方あるまい。
しかしこのような喧騒もしばらくすれば収まる。
オーディンで国葬がなされ、誰もが追悼していたとき、それは起こった。
フェザーン航路を通ろうとする帝国からの商船団。
そのうちの一隻を臨検しようとしたとき、船が爆発し、ザ○を含む警備兵が巻き添えになった。
■宰相府 ジークフリード・キルヒアイス■
宰相閣下がいつものように窓を背に机に向かっている。
皇帝陛下がお亡くな
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