第59話 「第三七代銀河帝国皇帝ルードヴィヒ一世」
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皇帝などという狂気の沙汰は二度と御免だ
第59話 「雷鳴と太陽」
銀河帝国首都星オーディンにおいて、第三六代銀河帝国皇帝フリードリヒ四世の葬儀が行われた。
葬儀の模様は銀河系全土に放送され、帝国のみならずフェザーンにも自由惑星同盟にすら、喪に服す者がいたという。それと同時に、地球教徒によるテロ事件で亡くなった者たちの葬儀も、帝国では国葬として扱われた。
ノイエ・サンスーシの前に集まった帝国臣民の群。
急遽、設置された巨大なモニターごしに、ルードヴィヒが姿を見せる。
しめやかな葬儀の中で唯一、臣民達が歓声をあげた一幕であった。
摂政皇太子ルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウム。第三七代銀河帝国皇帝となる男である。
年齢は二十代前半。すらりとした長身。意志の強さを感じさせる琥珀色の瞳に、豪華な金色の髪が王冠を思わせる。人目を惹く容姿に恵まれ、能力は証明済み。
帝国にあって長らく待ち望まれていた強い皇帝。
若く英明で、そして強い。
誰もが望む理想の王。
死者を悲しむより、新しい皇帝の誕生に皆の視線が向けられていた。
■ブラウンシュヴァイク公爵家 ラインハルト・フォン・ミューゼル■
オットー・フォン・ブラウンシュヴァイク公爵が、テロによって亡くなった事を伝えるために、俺は公爵家にやってきた。
「公爵夫人、エリザベート……」
無言のままで見つめる両者を前にして言葉に詰まる。
すでに皇太子から知らされているのだろう。しかしジッと俺の言葉を待っている。言わなければならない。これは俺の責務だ。
逃げ出したいぐらい辛い。だけど逃げる訳には行かない。ここで逃げたら俺はきっと、何もできない人間になってしまう。腹に力を入れ姿勢を正す。、
「ブラウンシュヴァイク公爵は地球教のテロによって亡くなりました」
「あの人は、なんと言い残しました?」
公爵夫人が静かに問いかけてくる。
「帝国を頼む、と言い残されました」
俺がそう言うと公爵夫人は、ゆっくり咀嚼するように言葉を噛み締め、頷いた。
「そう、あの人はブラウンシュヴァイク公爵として死んだのですね」
その言葉に衝撃を受けた。
そうだ。公爵は最後まで、帝国の未来を案じて亡くなっていった。帝国貴族として亡くなったのだ。婦人の事もエリザベート、娘の事も心配だっただろう。
しかし夫や父であるよりも、帝国の、帝室の藩塀。帝国開闢以来、五〇〇年続いたブラウンシュヴァイク家。その当主として亡くなった。
それが良いのか悪いのか、俺には分からない。
だけど、帝国貴族とはこうだ、と示した。それはそれで大した人物だったのだろう。
「ラインハルト……」
エリザベートが顔をくしゃくしゃにして泣いて
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