48:リング・オブ・ハート
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――コーン。
――コーン。
どこか、ひどく懐かしい音がする。
昔、その頃は毎日のように聞いていた音……。
――コーン。
――コーン。
遠くから響いてくる、その音に目を開ける。
「ここは……?」
その光景に、まずはそう呟かずにいられなかった。
――白。
白一色の世界だった。
どこまでも続く地平線も。その先の風景すらも真っ白。
床までもが真っ白で、自分が立っているのか浮いているのかも分からなくなるほどに全てが無の世界。
けれど空気はどこか穏やかで温かく、虚無感ではない不思議な気持ちがボクの体を包み込んでいく。
まさに。
死後の世界……のような場所。
――コーン。
――コーン。
……また、この懐かしい音。胸に郷愁が流れ込んでくる、思い出の音。
その音は、ボクの背後から響いてくる。
音の正体が何なのかを思い出す前に、ボクはその音の方へと振り向いた。
「……………」
その視界に、白以外の色が映り込んできた。
目の前の十メートル先、どこまでも真っ白だった光景の、その一部分だけ……土が広がり、草木が生い茂っていた。
緑に囲まれた中央は小さな空地になっていて、大きな切り株と、小さな丸太と薪の二つの山が積み重なっていた。
――コーン。
その場所の真ん中に、一人の男が立っていた。
その男は肩に巨斧を掲げながら、その腕と同じくらいの太さの丸太を片手で拾い上げ、切り株の上に垂直に置き立てる。
丸太を見つめる男は斧を振り上げ……
――コーン。
一刀のもとに、その豪快な振り下ろしとは反対に軽快な音をたてて、一本の丸太を見事に二つの薪へと一刀両断した。
それを見て、さっき以上の郷愁が胸を突き抜けた。
……そうだった。
ボクが、もっと小さな子供のころから見てきた光景と音だった。
その音を、その姿をもっと近くで見たいと一歩を踏み出そうと思ったその時。
男の脇の草むらから、一匹の小動物が飛び出してきた。
その小動物は男の足元をくるくる何週か回ってからピタリと足を止め、ボクに気づいたかのように目を向けた。
「――――!」
それを見て、ボクは思わず目を見開く。
この全てが白の世界でも見紛うことのない、穢れの無い蒼白の小さな体。
霧が立ち込めるような薄いヴェールの立ち込める鬣と蹄。
美しくねじれた、額に生える一本の白角。
そしてボクを見つめる、涙滴形の真紅の瞳。
「ルビー……!!」
そう。
あの時に亡くしたボクのはじめての友達。ミストユニコーンのルビーがその男の足元で、懐かしい視線でボクを見つめていたのだ。
それだけではない。
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