48:リング・オブ・ハート
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しが説明しますからっ」
わたわたとボクをなだめながら慌てるシリカが間に割って入った。
「あの、ユミルさんが怒るかもしれない、というのは否定しませんが……ユミルさんの形見は、もう……そのままの形としては返せない、という意味なんです……」
「…………どういう意味?」
否定しないんだ、と内心ツッコミながらも、ふつふつと疑念が湧きつつあるのを顔を出さずにはいられない。
ただでさえ大切で大切だったボクの友達の形見を、二つとも勝手に取り上げられた挙句、よりにもよってそれを『そのままの形としては返せない』とまで言われたのだ。
やっとキリト達を信じれるようになったばかりのボクの目が、ゆっくりと……以前の時のように疑念に鋭くなりつつあるのを誰が責められよう。
それを見たキリト達はさらなる焦りを見せる…………かと思われたが。
『―――――。』
違った。
キリトも、シリカも、アスナも、リズベットも。
……彼らに浮かぶ表情は揃って一緒だった。
――大丈夫。
――信じて。
そういう、いつかボクが……友達にしてみせた、まっすぐな想いを感じる表情だった。
「……………。…………続けて」
いつしか互いにしばしの無言の見合いをしていたボク達だったけど……目つきこそ変えないが、ボクは『信じる』という選択を口にした。
そして一拍、間をおいて頷いたシリカが言葉をつづける。
「――形こそ変わりましたが、きっとあなたが喜ぶと思って、そう信じてお預かりしていたんです。――そして今……お返しします。受け取ってください」
シリカはキリトに目配せをし、頷いたキリトが呼び出したウィンドウからそれをシリカが大切そうに両手で覆い込むように受け取り……そしてシリカはそれを、ボクへと広げて差し出した。
その両手に乗せられていたのは……
それは――小さな……手の甲ほどしかない、本当に小さな小箱、だった。
「…………これが?」
「はい」
少し震える声で問うと、すぐにしっかとした返事が返ってくる。
この時のボクの気持ちを、自分でも一言で言い表せなかった。
まず浮かんできたのは……本当に変わってしまったんだという、ある種の喪失感。それからは不安、期待、ほんの僅かな怒り……それらが混じった感情が喉までこみ上げてきていた。
「……っ、開けていい?」
「はい」
それらを飲み込み、その箱をボクも両手で受け取る。
色は真っ白で、水平の中折れ式で開くようになっているそれを、どこか震える手で…………開けた。
そして開けることで……ボクはまず、そのわざわざ用意されていた小箱の意味を知った。
その小箱は……リングケースだった。
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