48:リング・オブ・ハート
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なんて、一つだけだよ」
「ユ、ミル……」
マーブルは、もうここにいるのも耐えられないかのようだった。それでもユミルは徹に続ける。
「それは『ごめんね』じゃない。……だって、それはもうマーブルが気絶している間に、いっぱい言っちゃったから。……ねぇ、マーブル。ボクの目を見て」
「っ……」
ユミルはまっすぐとその大きな翠の目で彼女だけを見つめている。
マーブルは……おずおずと、本当に恐る恐る、彼の目を見ようとして……そしてなんとか視線を交わす。その細目は、責められる言葉を吐かれた次の瞬間、散り散りに壊れてしまいそうなほど怯えていた。
それを見てどこか満足した風のユミルは表情を変えず、言葉をつづけた。
「――だから、ボクがマーブルに送る言葉は、そう……ひとつだけ」
するとここで。
すう、とユミルは長く息を吸う。
そして放った言葉は。
「――――『ありがとう』」
透き通る声色で、そう言った。
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「マーブルは、ボクを育んでくれた。……慈しんでくれた。……愛してくれた……。だから、だからボクがあなたに送る言葉は……あなたに謝る言葉でも、あなたを責める言葉でもない」
そして重ねて、ユミルは言った。
「――『ありがとう』」
と。
すると、その翠の目に涙が浮かび出て……
「……〜〜ッ」
と、ユミルはぎゅっと自分の胸を握り締める。
「ああ……やっと、やっと言えた……!」
そして閉じたその目から輝く粒がこぼれ出す。その顔も歓喜に滲む。まるで、雪の下で長い長い冬をようやく越した種が芽吹くように。
……まるで、ずっと溜め込んでいた気持ちを吐き出せたかのように。
「ボク、ずっと自分の心に嘘ついてた……。だから、ずっとずっと言ったかった……! マーブルに、ありがとうって……!」
「ぁ……あ……わ、私っ……」
ずっと黙ってそれらを聞いていたマーブルが、その口に手を当てはじめる。
「私……私っ、あなたに憎まれてたわけじゃないの……? これからも、あなたを、愛していいの……? ……あなたの傍に、いていいのっ?」
ユミルはその涙も拭わずに言う。
「ボクがマーブルを責めようなんてこと……できるわけないじゃない。だって――」
『だってボクは――』。そう言って、芽吹いたかのような歓喜の顔に……大輪の花が咲いたかのような、笑顔が浮かんだ。
「ボクは――マーブルが……大好きなんだから……!」
「――――〜〜ッ……!」
その言葉に。
ぽろ、ぽろと、マーブルの長い睫毛にも涙が零れ始め――
そう思った次の瞬間、
「マーブルさんっ!?
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