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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十七話 <皇国>軍の再動
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陸軍将校であるこの男や、かつて第十一大隊で共に戦った妹尾中尉を代表にこの中隊には大隊から選抜した最も優秀な将兵が配属されている。
「何か分かったか?」
 大隊長の問いかけに本田大尉は焦りの色を見せずに答える。
「現在最も近い反応は三里ほど南東に大隊規模の宿営地らしき反応があります。
導術探査は半径二里以内の反応は切っていますので、我らはこれより樹木線に展開し、周辺の捜索を開始する予定です」

「――その宿営地は視認できるか?」

「距離が離れていいますので現在の装備では光量不足です。
ですが、よほど良い望遠鏡ならば光帯の反射を拾えるかもしれません」
 本田の答えにそっと新城は夜間行軍に備えて持っている望遠鏡に手をかけた。新城が持つ望遠鏡は海賊退治を任務としていた水軍の者達が使うものである。そのため、夜間に光帯の反射を拾えるようにあれこれと工夫が凝らされている。
 ――試してみるか。
自身の決定にすら恐怖する臓腑の不快な蠢動を抑え込み、新城は口を開いた。
「前に出てみる、一個小隊をつけてくれ」

 樹木線で彼らが見たものは騎兵――であった。それも僅か十五騎程のものであり、単純に考えれば高級将校とその護衛と思われた。新城が思考する時間を得られれば浸透突破の目標の一部を楽に行える機会だと考えられただろう。此処で潰しておけば一時的に司令部の動きが鈍る可能性が高い――勿論、逃げられたらお仕舞いである。だからこそ引きつけて殲滅せざるを得ないのだが。

 だが新城直衛は不幸にもその手間を省く事になった。視界が開けた時点であまりにも接近しすぎており、騎兵達は無用心に彼らへと接近してきたからだ。
 そして、そのうちの一人が小用の為か森に潜む猛獣たちに気づく様子もなく近づいた瞬間――腹部を鋭剣に抉られ、その生命を散らせた。

 大隊長に従い剣虎兵小隊も次々と敵に襲いかかった。真っ先に騎馬の者達へ剣牙虎達が飛びかかる。そして兵達も着剣をした騎銃を構え、容赦無く敵を刺突する。
 瞬く間に不運な騎兵たちは縊り殺されていく、日が沈み、逢魔が時も過ぎた闇の中で人ならざる猛獣たちに出会ったのだ、これほど確実な死もそうそうなかろう。
 鋭剣を抜き自分が鍛えた小隊による攻撃の成果を分析する一瞬の空白
「大隊長殿!」
彼の副官が発した悲痛にすら聞こえる警告と同時に
「猛獣使いめ!よくも!」
軋るような帝国語が新城の耳に響いた。

 彼が本能的な小心さに従い身を縮こまらせるように体を捻って森の方へと跳ぶと先程まで首があった場所を鋭剣の軌跡がなぞった。

 内心、奇声を上げたくなるほどの渾然とした何かが新城の内心を荒れ狂う。それは生きている歓喜なのか死への恐怖なのか或いはその両方なのか本人にも分らない。
 その全てを無視して鋭剣を構えなが
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