第三章 三話 オオハラの野望
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
との空気の差は、真夏の外気と冷蔵庫の如く圧倒的な隔たりがある。
「ま〜たやってるよルッキオのオッさん…」
「今度で何度目だ?良い加減飽きりゃいいのによぉ」
「そうそう、あのオッさんのせいで好きな番組も観れやしない」
と、酒場の酔客のルッキオに対する印象は個人的な次元でとても低い。その日の労働を終えて酒飲んで明日に備えようと言うささやかな楽しみを訳のわからないアジ演説で台無しにしているのだから無理からぬことだろう。
「我々は必ずや勝利を掴み……」
そのうち、オオハラ氏の演説も酒場の喧騒に飲み込まれて消えてしまった。ギリアスは炭酸水をもう一杯注文してまた一気に飲み干した。
炭酸が口内を刺激する感覚を覚えたが、どうもそれはぬるいようにも感じられた。
*
惑星ドゥンガ 軌道エレベーター
白野はパダムと連れ立って酒場を去り、軌道エレベーターへと乗り込もうとしていた。
軌道エレベーターは数十人がまとめて乗り込めるつくりとなっており、その星の発展度合いや時間帯にもよるが基本的に人が絶えることはない。
人混みの中に紛れた白野とパダムは、つい先程まで飲酒していたとは到底思えない程のしっかりとした足取りで進む。
「それで、艦長はこれからどうなさるおつもりで?やはり海賊退治ですか?」
「そうだな。手頃な手段ならばそれが一番いい。周囲の治安も良くなって誰も迷惑しない。俺たちは海賊船のジャンクパーツを売り払って金が手に入る。至れり尽くせりだ」
「わかりました。戦闘に備えて、機関の整備も万全に整えておきましょう」
頼もしい機関士に頷いて見せながら、二人は軌道エレベーターに乗り込む。エレベーターの操作ボタンが空中にホログラフ投影されたので、白野はその無数にある行き先の表示の中から宇宙港の項目をタッチした。
タッチすると同時にホログラフは消え、軌道エレベーターがゆっくりと動きだしやがて重力を振り切る高速へと加速する。
「さて、どうなるかな?」
「なんです?」
誰に言うでもなく呟いた白野の声を、しかしパダムはしっかりと聞き取っていた。
「酒場で見ただろう、あの下品なアジ演説を」
酒場全体に放送されていたのだから、聞こえていないはずもない。白野はその場では何も言わなかったが、飲んでいた酒が急にコーヒーでも混入したかのように苦味をます錯覚にとらわれていた。
彼は自身で戦い、そして勝つことに高い価値観を見出している。そして、先のルッキオ代表のオオハラ氏のように美辞麗句を並べ立てて自分ではやろうともしない危険なことを他人に押し付ける巧言令色の輩を、白野は蛇蝎の如く嫌っているのである。
【下品なアジ演説】という表現はおとなしい方に入る。
「ああ、ルッキオですか」
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ