第三章 三話 オオハラの野望
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始めてしまったのである。
拳と工具を交えた殴り合いが集結すると、今度は宇宙船のレーザー砲が争いの道具となって無数の人命が無意味に失われた。
ことここに至った時点でようやくエルメッツァ中央政府はその事態の全容を知るところとなったのである。
「アルデスタ、ルッキオへの非公式調停は失敗しました。双方引くつもりはないようです」
「そうだろうな。私でもそうする。だが、ことは一自治府の採掘権に収まらなくなる。海賊問題もまだ完全に解決を見た訳ではない。これ以上、国内の不安を増やしてはならない。治安維持への不安は、ひいては政府の能力への疑問へと直結する。それは避けねばならない」
憂いに満ちた顔でヤズー大統領はコツコツとデスクを指先でつついた。だからといって事態が好転するわけでもないが。
「この事態を動かす為には、奇貨が必要ですな」
「奇貨か…そうだな、ルキャナン君。この事態を動かす為には奇貨が必要だ。……そして、それは何も出て来るのを待つだけではあるまい」
「作り出しますかな?奇貨を?」
「さしあたり、そこまで現状は差し迫ってはいない。しかし、準備はしておきたまえ。実行の際の技術的問題の解決は君に一任する」
「はっ。それでは失礼いたします」
大統領に敬礼すると、ルキャナンは踵を返して颯爽とした足取りで執務室から退室して行った。
どうやら大国の威信を守る為の工作に従事するようである。その為の人員も、ルキャナンの元には大勢いるのだ。
*
惑星ドゥンガ 酒場
大国の権力者達が策謀を小賢しくも巡らせる談合を行った数日後、自由な生き物である白野達ユニコーンのメンバーは酒場で酒をあおり、喉と人生の渇きを癒していた。
この際、人材探索は後回しである。有能なクルーはそこら辺に転がっているわけではない。腰を据えて探さなければ見つからなかったりする。
そして、腰を据えて探さことの中に、酒場のマスターや客の知り合いに腕利きがいないか、遠回しであれ直接的であれ尋ねるのである。
「はあ、ギルドですか?……この辺りにはありませんねえ…」
「そうか…手間をかけたな」
「いえいえ」
ビールのグラスを傾けながら、なかば定型文となった質疑応答をひとしきり繰り返すのがここのところの白野のやっていることである。
時たまに宇宙港の端末で模擬戦を挑んでくるギリアスを危なげなく撃退することもしている。まだまだギリアスは白野からすれば駆け出しである。
なんにせよ、人材探索は難航している。どうも、有能なクルーが見つからない。たまに見つかるクルー候補は誰も彼もがパッとしない凡庸な印象を受ける人物ばかりであり、実際に白野が専門クルーに依頼して適正テストを候補に試したところそれこそパッとしない結果に終わるので
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