第三章 三話 オオハラの野望
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ッツァ中央政府軍少将にして軍政長官であるルキャナン・フォーと談合をしている。
「さて、ルキャナン君。君は現在のこの状態をどう思うかね?」
大統領がコツコツと指先でつついてみせたのは、彼の執務用デスクの上に表示された精密な星域図である。
星域図上方に【ルッキオ】、中央付近に【ベクサ星系】さらに下方に【アルデスタ】と表記された光点が表示されている。
「非常に好ましくない情勢ですな。このままなすことなく状況を座視すれば、いずれアルデスタとルッキオは紛争へと突入するでしょう」
「以前からきな臭いとは思っていたが、まさかこのタイミングでルッキオが暴走するとは…歯痒いものだな、ルキャナン君」
「ええ、まったくです。ようやくラッツィオの海賊騒動が収束したばかりだというのに問題が後から後から湧き出してくる」
この二人が話題にしているのは、エルメッツァ中央宙域辺境の惑星、ルッキオ、アルデスタの自治府が同じくエルメッツァ辺境に位置する資源衛星帯【ベクサ星系】の資源採掘権を争っていることについてである。
ベクサ星系の発見は、ルッキオによってなされたともアルデスタによってなされたとも言われている。
本当のところは分からない。どちらも自分達が先に発見したのだ、と優先採掘権を得る為に主張するからである。
今までは、エルメッツァ中央政府の直接的でない外交交渉が許すギリギリの範囲で紛争発生を抑制してきた。
直接介入できないのは、自治府の政治に中央政府は干渉しないという原則を遵守する為である。
ここで一つ注釈をする。
ルッキオ、そしてアルデスタのような【自治府】とかつて白野が訪れたカシュケントのような【自治領】は名前は似ているもののその実情は完全に異なる。
まずルッキオ、アルデスタの自治府は元々はエルメッツァ星間国家連合の一部であり、そこがエルメッツァ中央政府の掲げている政治形態である【小さな政府】の実践によって自治されているのである。
そして、カシュケントのような自治領は惑星開拓法によって開拓者が主権をもつ地域として認定される。開拓者本人が後継者を定めぬまま死亡すると、近隣の国家がその自治領を吸収するのが一種のセオリーとなっているが、開拓者が生存し続けいている限りいかなる国家権力の干渉も受けない。
善政を行う自治領もあれば、古代の暴君さながらに搾取と弾圧に狂奔する自治領もある。
カシュケントなどは交易の中継地点として隆盛を誇り、今後余程の事態が起こらぬ限りその地位を失う可能性は絶無であろう。
ともかく、今回は自治府である。
事の発端は数ヶ月前、ベクサ星系にて睨み合いつつ採掘をしていた両自治府の採掘集団の片方、ルッキオ側が、当時罵り合いながらもなんとか取り決められた採掘領域を大きく解脱してアルデスタ側でも採掘を
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