プロローグ
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◆
「――であるからして、ISの基本的運用は国家の認証が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――ひっ!?」
すらすらと教科書を読んでいく山田。しかし、途中で歩の方を振り向くと、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
当たり前だ。なんと歩は白目を剥いていたのだから。
山田はあまり勉学が得意ではない歩の様子は大丈夫かと思い、様子を見た。少し離れて見れば確かに彼はシャープペンシル片手にノートを取っているように見える事だろう。
しかし、彼はあろうことか、そのままの体勢で白目を剥き、口を半開きにしながら、頭を縦に揺らしていたのだ。
「お、岡崎さん大丈夫ですか!?」
つい、声を出してしまった山田だが、そこは元代表候補生の教師。すぐに何か持病の発作でも起こったのかと思い、歩の身を案じる。
「ハッ。寝てた……」
歩は山田の呼びかけに反応し、目を開ける。白目からぐりんと黒目が出てきたので、若干ビビる山田。それにしても寝てたとはどういう意味だろうか?永眠しかけたということか?
まさかそのままの意味で、ただ単に居眠りしていただけなのか……?
そう疑問に思い、一応聞いてみる。
「あの寝てたってどういう……」
「いやあ、10年ほど前から居眠りすると白目剥くっていう変な癖がありましてね……」
なんと本当にただの居眠りだったらしい。
しかし、嫌な癖もあったものだ。初見だとビビるぞこれは。いや、初見じゃなくても普通、驚く。慣れたら大丈夫かもしれないが、何だろう。慣れたくない。
山田他、周囲が歩の変癖にドン引きしていると、がっ!!という何かで思いっきり殴った音がした。
「全く、その歳で居眠りするとはな。お前には大人としての自覚が足り……ん?」
千冬が先程の一夏と同じように出席簿で叩くが、何かが変だと気付く。
自分が手にしている出席簿を見れば、何かが滴っている。赤い。何処かで見た気がする。というか、これは……。
「お、岡崎さん!血!血が!!血が出てます!」
歩の右隣の席に座っている一夏が叫ぶ。
本当だ。千冬が殴った所から、血が少し流れている。
途端、女子生徒達が叫ぶが、千冬の一喝により治まった。
「全く……この程度の事で騒ぎ立てるんじゃない」
教室のほぼ全員が貴女のせいだなどと思ったのは言うまでもない。
「岡崎、目は覚めたか?」
「ああ。おかげ様で」
先程まで丁寧な受け答えをしていたが、殴られたせいか若干キレ気味でメンチ切っている。しかも、滴る血のせいで、余計に怖く見えてしまう。お化け屋敷などで使えば悲鳴を上げるのは必至だろう。
「少し強くやりすぎたな。保健室で手当てしてやろう。ついて来い」
歩は無言で立ちあがると、千冬もそれに応じて動き出す。
「では山田先生。後は頼みます」
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