プロローグ
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ったのである。
そしてなんかずっこけるような音が聞こえた気がする。それだけ一夏に期待の眼差しを向けていた女子生徒も多かったのだ。
一夏はやってしまったと思う。今ここで千冬がいると思うと恐怖に肩が震え――
「何をやってるか馬鹿者!高校生にもなって自己紹介も満足にできんのか!」
「いってえ!!」
予感的中。山田の話から察すると会議から帰って来たらしい千冬が一夏の頭を出席簿で殴る。痛い。
◆ ◆ ◆
「諸君、私が織斑千冬だ。君達新人を一年で使い物にするのが私の仕事だ。私の言う事をよく聞き、よく理解しろ。出来ないものは出来るまで徹底的に指導してやる」
先程生徒の1人を叩いた千冬の素晴らしい程の暴力宣言。だがしかし、教室には困惑のざわめきではなく、甲高い黄色い声援がやかましく響く。
「キャ―――――!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
全くもって動機が不純。お前のような田舎娘はずっと地元で家業でも継いでいればいいのだ、と歩は思う。
「あの千冬様にご指導いただけるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様の為なら死ねます!」
きゃあきゃあと騒ぐ女子生徒達を、千冬はかなり鬱陶しそうな顔で見渡す。
「全く……毎年、よくもこれだけの馬鹿者が集まる者だ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
心から鬱陶しそうにクラスの現状を憂いているというのにそれがかえって逆効果を生む。
「きゃあああっ!お姉様!もっと叱って!罵って!」
「でも時には優しくして!」
「そしてつけあがらないように躾けて〜!」
これがこのクラスの大多数の相違なようだ。全くもって嘆かわしいかぎりである。
本来ならばこの時、歩は一言怒鳴って鳴き止めさせたい気分だったが、入学初日からそんな事をすれば確実に後々面倒事の種になるので、ここは無関心を貫く。伊達に歳ばかり食っているばかりではないのだ。
途中、箒が叩かれた一夏の様子を見ようとしたが、悲しきかな間の席にいる歩と目が合ってしまった為、すぐに目を反らした。
鳴り止まぬ喧騒は千冬の一声で一応静まった。
「さあ、HRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。いいか?いいなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ」
どちらにしろ千冬は返事をさせたいようだ。そしてその要望通り生徒全員が返事をする。
「よし。では今から早速授業を開始する。山田先生、頼みます」
「は、はい!」
どうやら、千冬は講義をしないらしい。山田の立ち位置は差し詰め、教育実習生という風にも見える。先程の応対から考えて、新任なのかもしれない。
◆ ◆
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