8 「ふりそそぐ空」
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それは、雲ひとつ無い空の下の世界。
ひとつの歯車が回りだした。噛み合い、巻き込み、やがてカラクリは全体へと働きかける。
人知れず、静かに。未だ表へ現れぬ夢魔へ、闇の欠片は少しずつ集いはじめた。
欠片を合わせて一枚の絵画が完成されたとき、セカイを湛えた泡沫の膜は、決壊する。
始まりは、ひとつの歯車。
どの歯車かは、誰にも分からない。去就? 怯懦? 感興? 暗澹? 困憊?
彼らはこの日、ただ、ありふれた日常を享受していた。
誰が気付いただろうか、この時。誰か気付く者はいただろうか、この時。
―――世界が崩れていく音を。
***
Scene.1【火山付近の町の中、オフホワイトの髪を持つ少女は、この日】
***
「あら? 包丁……」
今日の朝ごはんはサニーサイドアップ。まあ、ほんとのこと言うと毎日同じだけど。朝からメニューを考えるなんて、それも誰かにご馳走するなら兎も角、自分の為に作る料理なんて手を抜くのは当たり前でしょ。ま、私が誰かに自分の手料理を食べさせるなんて、この先100年経っても実現しなさそうな未来だけど。
そんなことはどうでもいい。今は私の朝ごはん朝ごはん、と。
私の好みは昔からケチャップを上にかけること。まあ、ここではそんな加工品、なかなか売ってないんだけどね。
それがこの間知り合った行商がなんと持っていたのよ。ん〜ラッキー! これからは定期的に持ってくるって言ってくれたし、毎朝のごはんが楽しみになるわ。この身体はいくら食べても全然太らないし。ていうか嫌でもすぐ運動させられるから、これくらいカロリー摂取した方がむしろいいわよ。うん、そうだわ。あとでクッキー焼こうかな。……やっぱ買お。そっちの方が楽だし美味しいんだもの。
それはそうと、今探してるのは包丁。刃物は危ないから、使ったら必ずすぐ洗って棚に仕舞ってるはずなんだけど……どこやったかしら。
「……あ、思い出した。ユマんとこ出してたんだった……。あ〜そういえば昨日だったっけ。あっちゃぁ〜」
幼いころから付き合いのある刀鍛冶のところへ研ぎに出していたのをすっかり忘れていた。鍛冶屋でもないと研げないような包丁にしたのがミスだったわ……。作るときも無駄に高額請求されたし……ユマのやつ、今度会ったら文句の一つでも言ってやらないと気が済まないわね…。
「仕方ないわねー。きゅうり如きに私の“とっておき”を使うのは癪に障るけど……時間ないし…」
壁掛け時計を見る。あと10分で出ないと、また連中がうるさく騒ぐ。
ぱっときゅうりを宙に放って一瞬。半分までを一口サイズの輪切りにカットして皿へ放り込
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