8 「ふりそそぐ空」
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声をかけた。
「あっれ、クソジジイ、歳ッスか?」
「誰がクソジジイだ、親父と呼べ!!」
「「「そこかよ!!」」」
機械音でうるさい中、それを上回る2人の怒鳴り声に各々持ち場で作業をしていた他の男たちが、腹を抱えて笑い転げる。
もとより赤い顔をさらに赤くして、親方は彼らを一喝した。
「うるせえッ、ケツの青いガキ共が! だまってチャキチャキ働かんか!! 給料減らすぞ、あ゛あ゛!?」
「「「「さーせんっした〜!」」」」
「てめぇら……待て、テオ! おめぇの話はまだ終わってねえ! “親父”がそんなに嫌なら仕方ない。だがワシを“パパ”か“ダディ”と呼ばせるまでは今日という今日は―――」
「尚悪いわボケェ! 誰が呼ぶかこのクソジジイ!! てめえが働け!!」
まだ20をいくらか超えたばかりの青年は腹から響く大声で怒鳴り散らし、親方の持っていた木箱も自分の木箱の上に重ねるとせかせかと歩き去った。薄手の長袖はすっかり汗で色が変わり、短く刈った金髪も歩くたび滴が飛ぶ。
親方は感慨深げにその後ろ姿を見送った。
「これが反抗期ってやつか……」
「いや、違うと思うぜ、親方」
同じく額の汗をぬぐいながら、やや遠慮がちに訂正を入れた部下の言葉は親方の耳に届かない。
ジリリリリリリリリ!!!!
鉄色のダブルベルアラームが鳴った。実用性だけを考えて設計されたそれは、作業場の中で反響して隅々まで響き渡る。勤務時間の終わりのベルだ。
男たちは一斉に、手にしたトンカチやらなにやらを放り投げた。親方が深く息を吸い、唾を飛ばして叫んだ。
「上がりだアアアア!! 飲むぞオオオオ!!」
「「「「ウォォオオオオ!!!」」」」
だいたい毎日繰り返される、この風景。テオと呼ばれた金髪の青年が、最後に火などを確認し終わってから、ランタンの灯りを消して回った。
入り口の巨大な鉄扉のノブに手を書けてから、ふと振り返る。今、なにかが奥で動いた気がしたが……。
「……ま、気のせいか。ガラクタしかねぇし」
重い扉をあけて、3重の鍵を閉める。首に巻いたタオルで頭をガシガシと拭いた。足が向かうのは、ここからでもまだ喧騒が聞こえる、あの連中御用達の酒場だ。安い酒を日付が変わるまで飲んで、飲んで、泥のように眠って、翌日11時に出勤。19時には終わり、酒場へ。20年近く続けてきた日常だ。
―――そういえば、いつもオレたちが弄ってるあのガラクタ、いつからここにあったんだっけ?
物心ついたころからずっとあれの整備を任されているが、まだ半人前の自分が言うことでもないが、まるで作業は進んでいない。今日もいつも通り、磨いて、研究所からいろいろ送り込まれる金属を合成、継ぎ接ぎしては引っぺがしての繰り返しだ。
――
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